県初の高校女子野球部 和歌山北に誕生
和歌山市の県立和歌山北高校硬式野球部に県内初の女子部が誕生し、来年4月のチーム本格始動を目指し、県内各地の女子選手に参加を呼びかけるなどの活動が活発化している。女子野球部設立に動き、最初の部員となった2年生の松野いろはさん(16)は「憧れの甲子園を目指して、一緒に楽しく野球をやりたい」と話している。
〝野球王国〟和歌山は多くの高校男子硬式チームが甲子園で活躍し、多数のプロ選手も輩出。小中学生の世代には女子選手も多く、女子チームが全国大会で活躍してきた実績もあるが、県内高校にはこれまで女子チームがなかったため、野球を続ける機会を求めて、選手は県外に流出することが多い現状がある。
高校女子硬式野球には全国高校女子硬式野球選手権大会、全国高校女子硬式野球選抜大会、全日本女子硬式野球ユース大会の3大大会があり、毎年7~8月の同選手権は2021年大会から、決勝戦の会場が男子と同じ阪神甲子園球場となっている。
県内の女子野球関係者にはかねて、「和歌山の女子は強いのに、なぜ県外に行かなければならないのか。高校女子チームをつくりたい」との思いがあった中、松野さんの存在と行動が、実現への大きな力になった。
松野さんは野球好きの両親のもとで小学3年生から野球を始めた。和歌山市の新南大新ファミリーズなどに所属し、投手や一塁手として活躍。6年生の時、新たに誕生した女子チームの和歌山シティスターズに入り、中学時代は田辺市の和歌山レジーナなどでプレーした。
高校は兵庫県の強豪校に進んだが、寮生活やチームの中で悩み、故郷に戻ることを決断。昨年6月に和歌山北高スポーツ健康科学科に入り、野球部でマネジャーとして、さらに選手として活動するようになった。
公式戦には出場できないが、試合ができる喜びを感じる野球部での日々。今夏の高校野球選手権和歌山大会では、ゲーム前のノッカーや記録員として、初の準優勝に躍進したチームを支えた。
それでも「甲子園でプレーする夢を諦められない気持ちがあった」。今春、女子野球部設立の願いを学校や県議らに相談し、7月に設立が実現。松野さんはただ一人の部員となった。
8月には、松野さんと母・明子さん、松野さんが所属していた和歌山シティスターズの中村秀和代表と選手の保護者、北高同窓会の役員、浦平美博県議らが西上嘉人校長を訪ね、女子野球部の今後を話し合った。
野球をしたい女子選手に来春の受験を呼びかけ、チームとして活動できる部員数にすることが当面の大きな目標。中村さんは「高校まで女子野球の受け皿を何とかしたかった。北高に協力していきたい」と話し、保護者からは「和歌山から全国を目指し、女子選手が集まってプレーできたら最高。期待している」などの声が上がっている。