和歌の浦誕生1300年記念大祭へ 実行委が発足
聖武天皇が和歌の浦・玉津島へ行幸してから来年で1300年の節目を迎えることを記念し、地元の有志らを中心にした実行委員会が発足。来年秋の「和歌の聖地・和歌の浦誕生1300年記念大祭」に向けたキックオフ・シンポジウムが23日、和歌山市七番丁の和歌山城ホール大会議室であり、記念大祭の成功へ、一丸となって取り組んでいくことを確認し合った。
和歌の浦には聖武天皇が724年、即位した年に玉津島を行幸。美しい景色に感動し、末永くこの地を大切に保存するよう詔を出した。この時、随行した歌人の山部赤人が詠んだ「若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る」の名歌に端を発して、和歌の浦が歌人憧れの地として広く知られるようになった。
1300年記念大祭は、歴史を再現し、和歌に詠みたくなるような美しい景観を未来につなぐことが目的。具体的な活動としては、市町川の浄化、奠供山(てんぐやま)や鏡山の整備などを予定している。
実行委員会は地元の有志をはじめ、大学の研究者らで構成。特別顧問は岸本周平知事、尾花正啓市長、世耕弘成参議院議員が務める。
開会に先立ち、実行委員長を務める中山勝裕さんが「来年秋の大祭を通じて、和歌山の名前の始まりとなった和歌の浦の歴史と文化を知ってもらい、県民はこれを誇りにしてほしいと願っています」とあいさつした。
シンポジウムでは、国文学者で近畿大学名誉教授の村瀬憲夫さんが「和歌の浦の誕生~聖武天皇行幸1300年を迎えて~」を演題に講演。「1300年の間、和歌は豊かにダイナミックに展開し、継承されてきた」とし、和歌の聖典とされる『古今和歌集』で山部赤人の歌が取り上げられたことで、和歌の浦が和歌の聖地として崇められるようになったこと、熊野詣でともつながり、歌人や詩人、文人や俳人らが訪れる有数の地になった経緯を説明した。
また、和歌山市特別顧問の信時正人さんが、和歌浦湾のSDGsの可能性について講演。「和歌の聖地」の魅力をどう発信し、持続可能なまちづくりに生かしていくかをテーマにしたパネルディスカッションもあり、講師2人に加えて、楠部真崇さん(和歌山工業高等専門学校准教授)、梶本久子さん(楠見小学校校長)、保井元吾さん(大祭副委員長)が登壇した。
行政や企業に向けては「子どもたちが地域学習をする中で、学びの伴走者になってほしい」といった意見が上がった他、「和歌は決して難しくなく、気軽に楽しむものとして多くの人に浸透させるのが記念大祭の一つの目標」「地元だけでなく、和歌浦を好きになった人が加わり、一緒になって進めていく形も良いのでは」などの提案もあった。