旧ソ連原産の「リザマート」
前号では、ぶどうの概念を変える希少品種で、パリッとした食感が特徴の「ベニバラード」を取り上げた。今週はさらに希少な品種で、生産地でのみ味わうことができる「リザマート」を紹介したい。
リザマートは旧ソビエト連邦のウズベキスタン共和国で生まれた品種。欧州系のぶどうで最高品種といわれる「カッタクルガン」と「パルケント」を交配したもの。縦長の果実が特徴で、大きいものであれば、直径3㌢、長さ5㌢程度になるものもある。皮はかなり薄くむきづらいため、皮ごと食べるのがお薦め。
果実の色は赤紫色で、香りはほとんどない。食してみると酸味が弱く、強い甘味を感じる。しっかりとした食感があるが硬いというほどではなく、果汁も多めでジューシーな味わい。
生産量がわずかであるため、農水省の統計値に現れず、各都道府県の栽培面積は分からないが、山梨県や長野県など、ぶどうの栽培が盛んな地域で、ごくわずかだけ栽培されているよう。筆者は県内の産直市場で偶然見つけることができた。収穫時期は8月上旬から下旬にかけて。流通が難しく、百貨店やスーパーなどで出回ることがない、幻のぶどうといって過言ではない。
その理由は果皮が極めて薄いこと。極めてデリケートな品種で、熟期を迎えた果実に雨が当たると、すぐに裂果し皮が溶け、腐ってしまう。ビニールハウスなどで雨が直接当たらない環境下でも、湿気が多いだけで裂果するほどで、栽培が非常に難しいという。そのため、産地から店舗への輸送も困難であり、生産地でしか味わえないものとなっている。
日本で収穫されるぶどうの中で、群を抜いて高級で希少とされるリザマート。目にする機会があればぜひ購入し、その味わいを楽しんでほしい。
(次田尚弘/和歌山市)