市堀川ににぎわいを 不動産CFで空き家再生

全国から資金を募り、和歌山市中心部の空き家を再生するための不動産クラウドファンディング(CF)が30日に始まる。「参加型まちづくり」の同プロジェクトを立ち上げたのは、2019年に創業し不動産仲介事業やコンサルティング事業を営む同市吉田の㈱和み(古田高士代表取締役)。不動産CFによる空き家再生の取り組みは県内初で、目標金額は1000万円、プロジェクト総額は4000万円。

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全住宅に占める「その他空き家」の割合は、和歌山県は11・2%で、高知県、鹿児島県に次いで第3位。全国的にも増加傾向にある。

今回再生されるのは同市雑賀町の元うなぎ店「いづもや」。江戸時代には商家の建ち並ぶ川岸だったという市堀川沿いの店舗を、川の眺めが楽しめる飲食と宿泊のスペースに再生し、環境整備と雇用促進、さらに和歌山の魅力の発信地にしたいとの思いが込められている。

国土交通省が支援する水辺を生かした地域のにぎわい創出「かわまちづくり」支援制度に、ことし8月、同市の市堀川が登録され、川沿いの空間整備の第一歩となる。再生プロジェクトには、国交省の指定を受け、民間のまちづくりを支援する民間都市開発推進機構と連携を図る他、地元の設計士や建設業が携わり、地域や官民が共同して参加。さらに、地元金融機関のきのくに信用金庫も協力する。同信金は独自に「きのくにまちづくりファンド」を設立しており、空き家の再生事業などに積極的に取り組んでいる。

CFは1口5万円から、スマートフォンでも投資が可能。年1回の配当が予定されている他、投資特典として、飲食店舗で一回り大きな「投資家ジョッキ」でのビールの提供や店内に支援者名の木札掲示、宿泊施設の割引クーポン提供などがある。CF設置には、不動産に関わる同事業の先駆けとしてまちづくりを手がける㈱エンジョイワークス(本社=神奈川県鎌倉市、福田和則代表取締役)が協力している。

和みの古田代表取締役(42)は、再生には敷地内だけでなく公共スペースも関わるため地域住民の声を聞き、理解を得ることが今後の課題とした上で、「空き家再生だけを目指していません。この店舗がきれいになると、川沿いの他店舗や並びの住居の方にも波及して、全体できれいな川の景色になることを期待しています。これからも地域の方々やプロジェクトに関わる皆さんと一緒に進めていきたい」と意気込み、CFへの協力を呼びかけている。

ファンドは24年2月末終了予定。現在は内部の一部解体などが行われており、同年3月末に店舗の営業開始を見込んでいる。同CFの詳細、投資方法については、㈱エンジョイワークスの関連サイト「ハロー!RENOVATION(リノベーション)」(https://hello-renovation.jp)で確認できる。専用ページは30日に開設される予定。

7月に開かれた「いづもや」見学会の参加者ら(和み提供)

7月に開かれた「いづもや」見学会の参加者ら(和み提供)