世界最大級の異名を持つ「雄宝」
前号では、栽培が難しく流通も困難な高級ぶどうで、旧ソ連原産の「リザマート」を取り上げた。今週は世界最大級のサイズといわれるほど大粒の、「雄宝(ゆうほう)」を紹介したい。
雄宝は「シャインマスカット」と「天山」を交配し育成された品種。いずれも黄緑色をしたヨーロッパ系の特徴を持つ。天山は1粒50㌘を超え、鶏卵と同程度にまで成長するものもある。それを受け継ぐ形で生まれたのが雄宝である。
果房は円錐形をしており、粒は楕円(だえん)形。果皮は黄緑色をしているが、日がたつにつれ黄色に変わる。ジベレリン処理により種なしが一般的で、ホルモン剤の影響で果実が肥大。中身を見ると種ができる部分が空洞になっている場合が多い。果実の色からマスカットをイメージするが、その香りはない。
食してみると、適度な歯ざわりがあり、糖度は20度程度で程よい甘さを感じる。酸味はあまり感じられないものの、さっぱりとした後味がある。果肉がしっかりとしていることから、薄くスライスしても型崩れすることなく、さまざまな料理にも活用が可能。ぶどうの中ではトップクラスといわれるほど皮が薄いため、サクサクとした食感で、食べやすく、使い勝手が良い。
主な生産地は長野県、山梨県、岡山県など。農水省統計で栽培面積が公表されておらず、希少な部類の品種といえる。旬は8月下旬から10月上旬。筆者は8月下旬ごろ、和歌山県内の産直市場で購入。一般的にスーパーなどで販売されることはまれで、大粒で品質のよいものは贈答用に使われることが多い。
世界最大級といわれるほど大粒の雄宝。売場で存在感を示していれば、ぜひ購入し、その味わいを楽しんでほしい。
(次田尚弘/和歌山市)