有吉佐和子文学賞創設 和歌山市がエッセイ公募

和歌山市は、市出身の小説家・有吉佐和子(1931~84)の名前を冠した「有吉佐和子文学賞」の創設を発表し、27日に第1回の募集を開始した。より多くの人々が創作の喜びを感じ、有吉作品や和歌山を知るきっかけにしてもらおうと、対象は全国の中学生以上、作品はエッセイとしている。応募締め切りは来年3月15日。

有吉は同市真砂丁(現吹上1丁目)に生まれ、父の転勤に伴いインドネシアで幼少期を過ごした後に帰国。『紀ノ川』『助左衛門四代記』『華岡青洲の妻』など和歌山が舞台の作品に加え、社会派小説の『恍惚の人』『複合汚染』、ミステリーの『悪女について』『開幕ベルは華やかに』など、幅広いジャンルで創作活動を展開し、一時代を築いた。84年、都内の自宅で急性心不全のため53歳の若さで急逝した後も、多くの読者に読み継がれ、近年は復刊も相次いでいる。

市は2022年6月、有吉の旧宅を移築、復元した市立有吉佐和子記念館を伝法橋南ノ丁にオープン。作品に関する貴重な資料や、有吉が仕事をしていた書斎などが公開され、多くの文学ファンらが訪れている。

文学賞で募集するのは自由テーマのエッセイで、400字詰め原稿用紙2~5枚。選考は、記念館の恩田雅和館長や学識経験者らによる意見聴取を経て、受賞作品を決定する。5月ごろの発表を予定し、表彰式は記念館で行われる。

各賞は、最優秀賞1編(図書カード5万円相当)、優秀賞1編(同3万円相当)、佳作5編(同1万円相当)、奨励賞若干数(同5000円相当、中高生のみ対象)。

応募は郵送、持参、メールのいずれかで和歌山市役所文化振興課(七番丁23、本庁舎10階、メールbunkashinko@city.wakayama.lg.jp)へ。募集要項は市ホームページに掲載している。

尾花正啓市長は「子どもたちにも書いてもらいたい。自由度を高めることで、参加する子どもたちも多くなるのではないか」とエッセイの公募にした理由を説明。「有吉さんの作品はふるさとにちなんだものが非常に多く、『複合汚染』など非常に先見の明も持っていた」とし、「しっかり見つめる目を持っている人、それを豊かな感情で表現できる作品を期待したい」と話した。

有吉佐和子(和歌山市提供)

有吉佐和子(和歌山市提供)