塚野さんが歌集 『花の氾濫』 出版
和歌山市中筋日延の塚野佐江子さん(77) が、 初めての歌集 『花の氾濫』 を短歌研究社から出版した。 平成元年以後 「水甕」 に掲載された作品から500首を選んだ。 水甕紀北支社主宰の歌人・井谷まさみちさん(74) は、 「ただ単なる趣味の短歌にはない、 文学としての香りを十分に感じさせてくれる」 「豊かな知性に基づく文明批評がある」 「粒揃いの短歌」 と評している。
塚野さんは 「水甕」 同人で日本歌人クラブ会員、 県歌人クラブ会員。 3人の子どもが成長した後、 「日常に何か変化を」 と短歌を始め、 平成元年に短歌結社 「水甕」 に入会した。
生うけしものら地球に 競いあう苑にしずかな 花の氾濫
鳩が鳩呼びて集まる街 角に冬日乗りいる一脚 の椅子
薄日受け産毛光れる枇 杷の花忘れいし人に会 うごとく寄る
農作業や英文学者の夫との日々、 姑の介護やふるさとの海南など、 日常の断面や身近な自然を切り取った歌を、 「光のつぶて」 「長靴の泥」 「塗り箸ふたつ」 「束の間の虹」 「遠きさざ波」 の5つで構成した。
あとがきで塚野さんは 「多様さに恵まれた自然と向き合っておりますと、どのようなささやかな事象にも、それ相応に尊い生命と固有のドラマのあることに驚かされます。この驚きは喜びでもあります。この驚きとその喜びに過不足のない言葉を探し当てることが、歌を詠むということでございましょうが、その道はいまもなお険しいものでございます」と記す。
そして完成した歌集を手に、 「井谷先生のおかげです」 と話し、 今の心境を次のように詠んでいる。 「われの夢形となりて届きたり ゆっくり回れ明日あさっても」
【歌集『花の氾濫』】水甕叢書第八五〇篇 発行平成24年3月18日 著者塚野佐江子 発行所短歌研究社 236ページ 定価・2100円