長い歴史を持つ「文旦」

前号では、福をもたらす縁起物として、サイズも価格も一流の「獅子柚子(ししゆず)」を取り上げた。獅子柚子は「文旦(ブンタン)」の一種。今週は文旦を紹介したい。
文旦は東南アジアを原産とする柑橘。日本には室町時代の末期に伝来したとされる。伝来した地は鹿児島県の阿久根市といわれ、市の木に制定されるほど。
一説には、中国の広東と長崎を往来する貿易船が難破し、現在の阿久根市に漂着し、助けられたお礼に文旦が贈られたことがきっかけ。船長の名が「謝文旦」といい、それにちなんで、文旦と名付けられたという。文旦は正式には「ザボン」という和名が付けられており、この名称でご存知の方もいるだろう。
品種により多少の差異はあるが、果実の直径は15㌢から25㌢程度。重さは500㌘程度のものから大きいものでは2㌔になるものもある。見た目が似ているグレープフルーツやハッサクは、文旦と別の柑橘の交配により生まれたもの。古くから存在する、伝統のある柑橘である。
食してみると、果汁が多く、実の一粒ずつがプリプリとしている。小玉のものは味が濃く、甘味と酸味を強く感じるが、大玉のものは水っぽさを感じてしまう。
11月ごろから翌年4月ごろまで収穫されるが、主に出荷されるのは2月から3月頃。農水省統計によると、収穫量の第1位は高知県(約1万1千㌧)で全国シェアの約95%を占める。愛媛県、鹿児島県、宮崎県、大分県と続き、主に西日本の地域で栽培されている。
筆者は県内の産直市場で購入。僅かながらであるが県内でも栽培されているようだ。新春を彩り、歴史を持つ文旦。その大きさに目を見張るが、ぜひ、その味わいを楽しんでみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)