能登半島地震の被災地派遣 日赤の医師ら報告
能登半島地震で、石川県輪島市に災害医療コーディネーターとして派遣されていた日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市小松原)の医師や看護師が帰還し、12日、同センターで活動を報告した。主に全国から集められた救護班を統括する任務を担当。救護所や避難所における感染症対策の重要性や、大地震に備えて和歌山の行政や個人が行うべきことなどを話した。
中大輔院長補佐兼医療社会事業部長(59)と看護師の芝田里花看護副部長(60)は事務作業を行う調整員2人とコーディネートチームを組み5~8日、市立輪島病院などを拠点に活動。中医師は2016年の熊本地震や18年の大阪北部地震などに続き、4回目の被災地派遣となった。
中医師は、全国から集まった災害派遣医療チーム(DMAT)、国立病院機構(NHO)などの救護班約80人を統括。救護班からの報告などを基に避難所の問題点を抽出し、天候や道路の状況などを踏まえて活動方針を決め、救護班に避難者の診療や避難所の環境整備などを指示した。
報告会で中医師は、現地到着時に救護班や避難所の数が不明だった状況を「混沌(こんとん)とした世界だった」と表現。個人のビニールハウスや駐車場などを含めた、市内170カ所以上あった避難所の数、避難者の年齢や性別などの状況把握に苦労したという。地震発生から1週間がたっても避難所には段ボールベッドなどが少なく、多くの避難者は床に直接毛布を敷いて寝ているといった状況も伝えた。
高齢者の体調に懸念 行政と連携し備えを
中医師は「今後最も重要なのは感染症対策」と強調。避難所や救護所は寒さから密閉され、水が少なく、避難者は密集して土足で過ごすなど衛生環境が悪いことから、ノロウイルスや新型コロナ、インフルエンザなどの感染症が拡大している。清掃して土足を禁止する必要があるが、一度屋外に出ることを嫌がる避難者も多く、実現は容易ではないと話した。
中医師は、避難所には介護や治療を必要とする高齢者が多く、常用薬が減ることなどで持病や認知症の悪化も懸念されていると説明。「お年寄りの多い地域で大きな自然災害が起こると、こんな救護所になってしまうのかとショックだった」と言い、高齢化率などの面から、南海トラフ地震など大規模地震の発生時には和歌山も同様の状況が起こりうると強調した。
行政との連携も重要であることから、県や各市町村は、現在確保している段ボールベッドの数や避難所に運ぶ人員などを把握する必要があるとし、個人では、常備薬を蓄えておくことなどが重要であると伝えた。