蔵出しに適した「晩生みかん」

前号では、今の時期に最盛期を迎え、伝統的な農法が日本農業遺産に認定されている「蔵出しみかん」の歴史を取り上げた。今週は、蔵出しみかんの特徴と味わいを紹介したい。
蔵出しみかんは、年末の時期に出回る一般的な早生から中生に分類されるミカンと違い、12月から1月にかけて収穫される晩生の品種。外見は一般的なミカンのように張りがあるわけではなく、外皮が少し柔らかくなっている。中身を見ると、じょうのう(袋)が分厚く、白い繊維束(筋)が多く、外皮が分厚いのが特徴。収穫後1~2カ月程度の期間、貯蔵をするため、このような晩生品種が適している。
一定期間貯蔵し出荷する理由は前号で紹介のとおり、一般的なミカンと出荷時期をずらすことにより高単価で販売できるという優位性はもちろんのこと、味にも違いがある。貯蔵することで水分が蒸発し、それにより甘味が濃縮され、酸の消費も進み、まろやかな味わいになる。
食してみると、年末に出回る一般的なミカンと比べ、採れたてのフレッシュさは感じづらいが、甘さが際立つ。酸味が強めの早生品種を好む方には物足りなさがあるかもしれないが、甘さや、まろやかさが好きな方にはお薦めである。
店頭に並ぶ蔵出しみかんは、糖度ごとに分類され、異なる箱に入れられて販売。糖度12度を超えるものは薄紫、糖度13度を超えるものは黒というように、光センサーを用いて選りすぐりのミカンが販売されている。黒い箱であれば、特選等級のM寸が5㌔程度で約5000円。年末に流通するミカンと比べればやや高価と感じるかもしれない。
海南市下津町で受け継がれてきた特別な味。旬の今、その魅力を感じてほしい。(次田尚弘/海南市)