県オリジナル品種「田口早生」
前号では、雨が多い地域に適合し、浮皮が無く高糖度である「石地温州」を取り上げた。蔵出しみかんは晩生の品種が中心であるが、まれに、早生の品種でも貯蔵後に出荷されるものがある。今週は「田口早生」を紹介したい。
田口早生は、1978年に当時の和歌山県有田郡吉備町(現在の有田川町)で、興津早生の変異種として発見されたもの。樹勢が強く葉が大きいことから育成対象となり、1975年に品種登録された。名称は発見者の田口氏に由来する。
興津早生と比べ減酸、増糖ともにやや早く、糖度は11月上旬に12度程度にまで達し収穫可能となる。樹上で熟成させることで糖度はさらに増す。クエン酸は10月下旬には1%以下となるが、減酸は遅い傾向にある。石地温州と同様に浮皮が発生しづらく、じょうのうは薄い。果実は120㌘程度(M寸)で、果汁が多く味わいも良い。
一般的には11月下旬の早生品種のシーズンに出荷されるが、12月まで樹上に残す農家もいるという。収穫後、年明けまで貯蔵した田口早生を、1月下旬、海南市内の産直市場で見つけ購入。貯蔵することで糖度は14度程度まで増し、減酸が遅い特性から、他の蔵出しみかんと比べ、やや酸味が残りつつ、濃い甘味が特徴のものに仕上がる。濃厚さが故に、まるでオレンジのゼリーを食べているような食感。早生ならではの珍しい味わいである。
農水省統計(2021年産)によると、全国の栽培面積は約650㌶。和歌山県内は約330㌶と第1位で、熊本県(約83㌶)、長崎県(約67㌶)、愛媛県(約58㌶)と続く。
滅多に見る機会がない早生品種の蔵出しみかん。ぜひ、その味わいを楽しんでほしい。(次田尚弘/和歌山市)