37年分の出会い宝に閉店へ ケーキ店ひいらぎ
和歌山市毛見のケーキ店「ケーキハウスひいらぎ」が、11月28日に閉店することを決めた。店主の濃添嘉一(のぞえよしかず)さん(65)は「今やらなければならない整理などがあり、一度区切りをつけるための閉店です。また何かの形で、皆さまに大好きなお菓子の提供ができたらと考えています」と話している。
同店は1988年にオープン。人気のフィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子をはじめ、シュークリームやショートケーキ、チーズケーキなどの生菓子が並ぶ。
濃添さんは高校3年生の頃、担任教諭に勧められ、卒業後は調理の専門学校へ進学。料理をするのは好きだったが、鮮魚を触ることが苦手だったことから、パティシエの道に進み、卒業後は神戸や県内の製菓店に勤務。働いて6年がたち、御坊市のパンとケーキの店ボナペティヤナギヤで働くことに。そこでマスターと出会ったことで、自分の目指すケーキ作りが明確になった。
良い材料を使い、価格は安く、食べて安心、体に優しいケーキを作りたい――。そんな思いで情熱を注いできた。
お薦めはココナッツフィナンシェ。ココナッツとバターの風味が広がるしっとりとした食感で優しい味わい。「シンプルだけど、食べて気持ちがあたたかくなるお菓子づくり」を心がけてきたという。
店の休憩時間には、近所の小学生たちとキャッチボールもした。その子らが成長し「キャッチボールがきっかけで高校では野球部に入った」と報告に来る子、「やっと、ここのケーキをまた食べに来られた」と、思い出の味に涙する子もいたという。
フランスで商品を紹介する際には、濃添さんのお菓子の魅力を伝えたいと、従業員がフランス語でPRチラシを作って持ってきてくれたこともあった。
多くの人に支えられ、濃添さんは「良いスタッフに出会え、お客さまに成長させてもらった。これまでの出会いが宝物」と振り返り、「37年わがまましてきた。飽きずに食べていただいたことに感謝しかない。あと半年、スタッフと『良かったね』と笑いながら楽しく終わりたい」と笑顔で話している。
午前9時から午後7時まで。定休日は火曜。