毎年ミカン「ありがとう」 石巻から手紙届く

石巻から届いた手紙を読み返す高垣さん
石巻から届いた手紙を読み返す高垣さん

「和歌山県のみなさんへ。毎年遠い所からたくさんのみかんを届けてくださりありがとうございます」――。宮城県石巻市の中学生から和歌山市の高垣晴夫さん(63)のもとに、3通の手紙が届いた。青年ボランティア団体の会長を務める高垣さんは、東日本大震災の発生以降、毎年仲間と東北に県産ミカンを届け、交流を重ねてきた。手書きの文字を何度も読み返し「小さかった子どもたちが大きくなり、手紙までくれるようになった。読むと胸にじんとくるものがある」と話す。

交流のきっかけは2011年、高垣さんが石巻の仲間に、ストーブとミカンを届けたこと。以来、ビタミンCの豊富なミカンを食べて元気に過ごしてもらおうと、毎年、年末に現地で「みかん狩り運動会」を企画。和歌山市青年団体協議会のメンバーらとミカンをワゴン車で運び、東北の人たちと一緒に体を動かしながら楽しい時間を共有してきた。

高垣さんは「活動が続けられるのはミカンを提供してくれる方、会場の準備をしてくれる人など、支えてくれる多くの方のおかげ」と話す。

「運動会」には幅広い世代の住民が参加。中には震災後に生まれた子もいる。かつては赤ちゃんで抱っこされて参加していた子も、今では中学生になり、運営の手伝いをしてくれるまでになったという。

3人からの手紙には、毎年欠かさず訪ねて来てくれることへの感謝の思い、運動会を通じて楽しい思い出ができること、和歌山を近くに感じられることなどがつづられている。

中には、あどけない表情を写したものから最近の様子まで、年齢とともに成長の過程が伝わるような写真の印刷も添えられている。

「現在中学1年生で身長170㌢です。みかんのおかげ様で大きくそだちました」

「毎年みかん運動会のお知らせがくると『今年も和歌山のみかんが食べられるね』という会話を家族としています」

「いつか私も和歌山に行ってみたいです」

それらの文面に、高垣さんは「とてもうれしく、感動した。子どもたちの成長を見ることができ、ずいぶん時間がたったんだなぁと感じます」としみじみ語る。「今後も、何かあったときには助け合えるような関係でありたい。震災を経験していない世代にも、記憶をつないでいければ」と話し、ことしの年末も石巻の子どもたちに会えるのを楽しみにしている。