踊り継がれるハワイの「フラ」

前号では、現地の植物を原材料とするボタンを使用することを、アロハシャツを名乗る条件であることを取り上げた。地域への思いと愛が込められたハワイ独特の文化。今週は「フラ(ダンス)」の歴史と文化を紹介したい。
フラダンスの「フラ」は現地の言葉で「踊る」「演奏する」「歌唱する」を意味し、ハワイでは「フラ」と呼ぶのが一般的。諸説あるが、起源は火山の神(火の神)にささげるための踊りとして始まったとされる。元来、文字で伝承するという文化がなく、踊りで歴史を伝えるという役割を持ち合わせていたという。
1820年にキリスト教の宣教師らが島に入ってからは、火山の神を信仰する要素があるフラが脅威と見なされ、1830年に禁止令が出され、フラは表舞台から姿を消してしまう。
それから約50年後の1874年に禁止令が廃止。フラに加え、サーフィンやハワイ語の会話が復活するも、フラは市民から遠い存在になっていたという。転機が訪れたのは1950年代の公民権運動の活発化。ハワイ固有の文化を取り戻そうと「ハワイアン・ルネッサンス(文化復興運動)」が起き、過去の歴史や文化の意義を探り、再認識した上で現代生活に復活させる流れから、フラの文化が再び根付くようになった。
宿泊したホテルの庭では、夕方になると古木の下で現地の音楽とともにダンサーが踊りを披露。海に沈む夕日を眺めながら、お酒を片手に、ゆったりとした至極の時が流れる。
20日、白浜町の白良浜ではホノルル市のワイキキビーチとの姉妹浜提携25周年を記念したイベントを開催。地元で活動するダンスチームとハワイ出身のミュージシャンによるフラが披露されるなど、国内でもなじみのある踊り。ここにもハワイの人々の地域愛が溢れている。(次田尚弘/ホノルル)