訪問型の病児保育 看護師の福田さん事業化へ

和歌山市の看護師・福田彰美さん(53)が、体調不良の子どもの自宅を訪ねて保育する訪問型病児保育の試験導入を始めた。市内では初めてで、来年7月の事業化を目指す。福田さんは「仕事を休んで一人で抱え込む子育て世代の人たちに、一人で頑張らず頼ってほしい。子育てで孤立する母親や、人口減少などの課題に自分の経験で挑みたい」と意気込んでいる。
福田さんは2004年から22年まで、日赤和歌山医療センターの救急病棟や集中治療室で勤務した。子どもの急な発熱で、周囲に謝りながら申し訳なさそうに早退する看護師仲間の姿を何度も見ては、「子どもが熱を出すのは当たり前で誰も悪くない。誰かがこの状況を解消しないと」と痛切に感じていた。
50歳を目前に、「新しいことに挑むなら今が最後のチャンス。自分のキャリアで社会課題に取り組みたい。経験を重ねた自分ならやれる」と同院を退職した。福田さんは市や県の相談窓口を訪ね、市内は病児保育の施設が2カ所のみで、県内の同施設数が全国最下位(こども家庭庁が24年度に調査実施)という現状を知った。働く母親200人にアンケートを行い、病児保育の受け皿が全く足りないという声に「やるしかないと背中を押された」と話す。昨年11月から同市内の1~12歳の子どもを対象に始め、これまでに約60人が事前利用登録している。
訪問型は子どもが慣れた環境で保育を受けられ、病児保育施設内での集団感染のリスクが軽減できるメリットがある。
子どもと保護者の心のお守りになればと、ドイツ語で「お守り」を表す「アムレット」を屋号とし、認知を図ろうと母親たちのコミュニティーでのPRなどに尽力。利用の前に親子での面談をし、子どもの健康状態を把握する。保護者が体調不良のときにも利用してほしいと呼びかける。
利用登録した同市内で料理教室を運営する濵本蓉子さん(34)は「病気の子どもと仕事のはざまで苦しんで、今も自分を責めることがある。福田さんは本当に救い」と話す。
福田さんは「病児保育は大変なことですが、大きなやりがいがあり、好きでやっています。地域に支える人がいると知ってもらい、安心して利用してほしい」と話している。
1時間1800円。市外は要相談。詳細や問い合わせはインスタグラム(@amulett_wakayama)から。