命に感謝し落語奉納 脳腫瘍乗り越え片山さん

神前で渾身(こんしん)の落語を奉納するのは、和歌山市立藤戸台小学校4年の「にこにこ亭あっぽん」こと片山怜和(れな)さん(9)。2歳で脳腫瘍になり闘病。母の美織さん(40)が同市和歌浦西の和歌浦天満宮で祈り続けた日から7年。天神祭りが開かれた7月24日、同宮で感謝を込めた落語を奉納した。怜和さんは「人を笑わせるのは楽しくて面白い」、美織さんは「7年前は真っ暗に見えた景色が、きょうはキラキラ輝いて見える。本当に神様に感謝」と笑顔だった。
怜和さんの病気が分かったのは2歳3カ月を迎えた時。突然「頭が痛い」と言い出し、2~3日に1回、嘔吐(おうと)する日が続いた。県立医大で検査をすると頭の真ん中に腫瘍が見つかった。頭部を開いて腫瘍を取り除く手術は10時間にも及び、美織さんと家族は病院で待つことができず、近くの和歌浦天満宮に行き、ひたすら祈り続けた。手術は無事に成功。怜和さんは話せず、食べられず、歩けなくなっていたが美織さんは「命があるだけ良かった」と医師と神に手を合わせて感謝した。
その後は大阪の病院で抗がん剤治療を続け、怜和さんの状態は徐々に元に戻り、1年後にはすっかり元気になり退院した。
落語を始めたのはことし4月。怜和さんには短期記憶能力が弱いなどの後遺症があるが、何度も繰り返すと覚えられることから、落語に向いていると「わかやま楽落会」の体験会へ。人を笑わせるのが好きな怜和さんは「やってみたい!」とすぐに入会。毎日繰り返し練習を続けてこの日を迎えた。
披露した落語は「縁起かつぎ」。表情を変え、面白おかしく演じる怜和さんに大勢の観客は笑い、惜しみない拍手を送った。
小板政規宮司は「面白かった。人を笑わせるぐらい元気になって良かった。これからも周りを明るくしてほしい」と激励。
怜和さんは「将来はお笑い芸人になりたい」と夢を持ち、これからも落語を続けていくという。