万博和歌山ゾーンで結婚式 江戸時代と現代つなぐ

華やかな着物姿で来場者の祝福を受けるMr.Bitterさんと由佳さん
華やかな着物姿で来場者の祝福を受けるMr.Bitterさんと由佳さん

和歌山市の歴史や着物文化を世界に発信しようと活動している「Kishu Inspire Project」(紀州インスパイアプロジェクト、KIP)は13日、大阪・関西万博の関西パビリオン「和歌山ゾーン」で、江戸時代後期の婚姻をモチーフにした「結婚式ショー」を行い、新たなカップルの門出を来場者と共に祝った。

結婚式ショーは、政略結婚が多かった江戸時代と、自由に思いを伝え合って結婚を選べる現代とをつなぎながら、和歌山城など同市の魅力も紹介するもの。大阪市を中心に和歌山でも音楽活動を展開する3人組ユニット「Honey GOLD(ハニーゴールド)」のリーダーMr.Bitter(ミスター・ビター)さんと、活動を支えてきた由佳さんのカップルが、この場での挙式を選んだ。

総合プロデュースを手がけたKIPの宮本知佳さんによると、万博会場は演出の手法や使用できる機材などにさまざまな制約があり、「この場所でするのは無理、というところから始まった企画だった」という。準備に使える時間も短い中、必要な着物や舞台装飾の調達をはじめ、多くの協力者が尽力。「皆さんが何とかイメージを形にしようと動いてくださり、一つになったことで実現できた」と感謝している。

江戸時代後期の婚姻を表現した第一幕
江戸時代後期の婚姻を表現した第一幕

第一幕では式に先立ち、徳川御三家の一つ紀州藩で最も文化が花開いたといわれる10代藩主・徳川治宝の時代の婚礼を再現し、甲冑(かっちゅう)などが置かれた舞台に侍や奥女中らが居並ぶ中、自分の意志ではない婚姻に向かう大名家の花嫁の心境を舞などで表現した。

第二幕は、ハニーゴールドのNONOさんが、嫁入りの道中で歌われてきた民謡「紀州長持唄」を披露。第三幕では、新婦の由佳さんが白無垢の花嫁衣装を整えていく着付けが、来場者の目の前で行われた。

第四幕で人前結婚式を迎え、親族も舞台に並ぶ中、新郎への羽織着せ、新婦への紅差し、三々九度、指輪交換、結婚証明書への署名などの儀式が順に行われ、末永い愛を誓い合った2人を祝福の拍手が包んだ。

新郎新婦は、より華やかな着物へのお色直しの後、紫の和傘を差して再登場。県の中瀬雅夫万博推進担当参事、和歌山市の稲垣智久観光課長が祝辞を述べた。

Mr.Bitterさんは「世界中の人々が集まる特別な場所で、この瞬間を迎えられることを心からうれしく思う」と喜びを話し、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」になぞらえて、「私たちもお互いを大切にしながら、笑顔あふれる家庭をデザインしていきたい」と笑顔で誓った。

結婚式の後には、着物の歴史を表現したファッションショーも行われた。

宮本さんは「昔と今をつなぎ、和歌山の魅力を伝えたいと取り組んできた。多くの来場者に見ていただき、新郎新婦も思い出に残る式になったと喜んでくださった。諦めずにやれてよかった」と話していた。