根来塗を独自のアートに ひらのまりさん地元初個展

「根來継ぎは、根来の持つ風土の魅力を私なりに表現したもの」――。根来塗に着想を得た独自の技法で、破壊した器を継ぎ合わせる和歌山県岩出市根来出身のアーティスト・ひらのまりさん(38)。3年前から根來継ぎ作家として活動し、新しい芸術表現として注目される、ひらのさんの個展が28と29の両日、和歌山市の和歌山城天守閣で開かれる。地元での開催は初めて。

ひらのさんは県立和歌山高校を卒業後、上京。洋服デザインの専門学校で学び、アパレル会社に就職。働く中でステンドグラスに魅了され、2019年からガラスアート作家として活動を始めた。ステンドグラスと食品サンプルを融合させた独自の表現方法が評価され「Independent Tokyo2019」では複数部門を受賞。
ガラスの断片をつなぎ合わせる西洋のステンドグラスと日本の伝統との融合を模索している時、幼い頃から身近にあった根来塗を思い出した。職人の元を訪れ、漆を何度も塗り重ねる高度かつ複雑な根来塗の技術を学んだ。
「漆は塗るだけでなく継ぐこともできる。根来塗の技術でガラスを継いでみたら」と職人から言われたことをヒントに、23年から試行錯誤を重ね「朱と黒の漆を掛け合わせた塗り」の技法に、金継ぎを組み合わせ、破壊した器を装飾。そこにガラスを組み込んだ独自のアート表現を確立し、東京と和歌山を拠点に作品を制作している。
今回の作品展で展示するのは、「権威を象徴する場所である天守閣で開催するので、力強さを表現したい」と、兵庫県丹波篠山の焼き物で赤みを帯びた色合いが特徴の「赤丹波」の花器を割り、接着石膏でつなげて漆を塗りガラスを乗せた「深海」。
また、縄文土偶や鯛の皮を使った作品など約10点を展示する。
「自分たちの地域にあるものの良さを改めて気付くきっかけになってほしい」と話す。
午前9時から午後5時半(28日は夜間展示もあるため10時)まで。入場は大人410円、小中学生200円。
文化発信へ語り合う 27日一条閣でシンポ
27日午後1時からは、かつて文化や技術の発信地として栄えた根来を舞台に、和歌山生まれの作家と県外の知識人や文化人が歴史や文化、芸術などについて語り合うシンポジウムを一乗閣(旧県議会議事堂)で開催する。
ひらのさんと、黄檗売茶流先代家元・中澤弘幸さんによる漆の文化史についての座談会、和歌山の妖怪研究で知られる漫画家・マエオカテツヤさんと、呪物、オカルトコレクター・田中俊行さんによる妖怪話と怪談会、まちや祭りを巡る中山勝誠さんと永原レキさんによる議論など、多彩なプログラムを予定。
ひらのさんは「古き良きものを次の世代が新たに解釈し直して、令和の伝統文化にしていけるよう、自分たちが盛り上げていきたい」と話す。
入場料は3000円(高校・大学生半額、中学生以下無料)。
参加を希望する人はこちらから申し込む。問い合わせはメール(info@negorotsugi.jp)。