海をめぐり交流伝える 紀伊風土記の丘で特別展

和歌山市岩橋の県立紀伊風土記の丘で4日、再編のための休館を前に最後となる秋期特別展「遥かなる古墳時代の海へ―紀伊半島と海をめぐる交流―」が始まった。12月7日まで。約1500年前の古墳時代を中心に、紀伊半島の人々と海を通じて遠く離れた地域との交流を伝える壮大な展示となっている。
同館や館外で保管されている約210件、1300点を一堂に展示している。
展示室入り口には大型の二つの復元船が並ぶ。大阪府八尾市で発掘された船は実物の堅板(波よけ板)を見ることができ、長さは推測で12㍍以上。大型船で紀伊半島から瀬戸内海を渡り朝鮮半島へ交流したことが推察されている。田辺市と神奈川県三浦市で見つかった二つの釣り針は、形、大きさ、作り方、材質がほぼ同じ。約400㌔㍍を隔てた二つの地で、漁師たちの交流があった証拠になるという。みなべ町城山古墳から出土し、現在は東京国立博物館に所蔵されている銅鏡なども並ぶ。
3日に行われた開会式と内覧会には、県の教育関係者や地元の西和佐小学校6年生、紀伊風土記の丘ボランティアの会の会員ら、105人が参加した。内覧会では学芸員の説明を受けながら、参加者らが展示に真剣に見入っていた。
同展担当の田中元浩主査学芸員(44)は「紀伊半島の現在の文化がいろいろな時代の多様な交流によって形づくられてきたことが分かる展示。自分の先祖が『こんなに』広い範囲で交流していたことを知ってもらえたら」と話していた。
来賓で県立近代美術館の不動美里館長は「時代を超えて海がつなぐ文化の歴史や人の営み、つながりが伝わってきて世界観が変わる」と話していた。
資料は2028年度に開館予定の県立考古民俗博物館(仮称)でも関連して展示される。