休耕田活用し雇用創出 サンコーが農園事業

生活用品の開発や製造販売を行う和歌山県海南市大野中の㈱サンコー(角谷太基代表取締役)が、ことし4月から有田川町生石で農園を始め、地域の休耕田活用や雇用創出に一役買っている。
「三幸農園」と名付けられた生石高原の麓にある標高500㍍ほどに位置する畑では、キュウリやトマト、ハクサイなどを育てて、販売。夏野菜のキュウリは2カ月で7万本が完売するほど好評だった。
農園を始めたきっかけは、同地区出身の従業員、SCM本部の熊石和彦本部長(62)の発案。熊石さんの両親が、高齢のため農園栽培を辞める決断をしたことから、長男である熊石さんが「継ぐことはできないが、どうにか助けられないだろうか」と同社に相談。角谷社長は地域貢献になればと快諾した。
新たに農園を管理する部署も立ち上げ、20~50代3人の従業員が所属し、約4反の畑を任され手作業で畑を耕すことから始めた。物流倉庫での勤務から同農園の園長となった北山義之さん(60)は、最初の1カ月は筋肉痛で体が思うように動かなかったと振り返る。
活動を始めると、情報を聞きつけた近隣住民が、重機を持ち込み整備するなど協力してくれ、肥料の入れるタイミングや苗の植え方なども教えてくれた。
キュウリは毎日続々と実り豊作に。北山園長は「キュウリがこんなにもできるとは予想していなかった。野菜は成長を待ってくれないので先を読み、朝夕収穫を続け大変だった」と話す一方で、「出荷したキュウリが売れたと数字で見ると、やりがいにつながっている」と笑顔。
最近は、「自身の畑も引き継いでほしい」と、高齢の近隣住民からの依頼も寄せられ、ハッサクやギンナンなどの収穫も担うことになり、管理範囲が拡大している。
引き継いだ後は住民から、従業員に育て方や接ぎ木などの知識を提供してもらい、繁忙期には、時給制で手伝ってもらうことで雇用を創出。住民にとってはコミュニケーションの場にもなっているという。北山園長は「ことし、トマトやサツマイモは思うようにいかなかったので成功させたい。来年はことしの倍の収穫を目指したい」と話している。
収穫した野菜は「生石のやさい」として、県内のスーパー・オークワや産直市場などに出荷される。



