「未来スクール」が最優秀 第15回キャリア教育アワード

表彰状を手に笑顔の山本さん
表彰状を手に笑顔の山本さん

和歌山市内の中学生を対象に、学校と地域企業が協働で行う探究型キャリア教育プログラム「未来スクール」が、「第15回キャリア教育アワード」のコーディネーター部門で最優秀賞に輝いた。未来スクールには、県内に事業所を持つ約70の企業が参画。地域で働く多彩な職種の大人が子どもたちに仕事の魅力や情熱を伝え、郷土愛を育む地道で継続的な取り組みが高く評価された。

授業当日、円陣を組み心を一つにする「職業先生」や校長、ボランティアスタッフら(山本さん提供)
授業当日、円陣を組み心を一つにする「職業先生」や校長、ボランティアスタッフら(山本さん提供)

キャリア教育アワードとは、子どもたちが社会や仕事について学び、自らの生き方を考える力を育むことを目的に、優れたキャリア教育の実践を行う企業・団体・プロジェクトを表彰する制度。一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会が主催、経済産業省などが後援。

未来スクールは学校と地元企業が連携し、2014年に発足。学校法人山本学園が運営するIBW美容専門学校の副理事長で、認定キャリア教育コーディネーターの山本理恵さんが代表となり、当初は年に1回、休日開催のイベント形式で始まった。

地域で働くさまざまな業種の大人たちが「職業先生」となり、子どもたちに地元で働くことの楽しさや仕事への情熱を伝えてきた。「授業形式で行ってほしい」との要望が増えたため、19年にイベントとしての開催は終了。22年に同学園内にキャリア教育事業部を立ち上げ、市内の公立中学校で20コマの教育プログラムとして継続している。昨年度は6校で実施。44人が授業を行い、延べ1211人の生徒が受講した。

山本さんは、専門学校の退学率が20%近くあった時に、将来像を描けない若者の姿に危機感を抱いた。現場で活躍する卒業生たちを招いて講義や技術体験を行ったことで、学生の学習意欲や学校生活が変化し、退学率は徐々に低下。17年にはゼロになったという。「資格や勉強だけでなく、子どもたちの心に火をつける教育が必要だと実感した」と振り返る。

未来スクールでは講話だけでなく、実践型の体験授業も重視。すし職人による握り体験やデザイナーによるデザイン体験など、子どもたちが「本物」にふれる機会を設けている。事前・事後学習を含む探究型プログラムも整備し、生徒の自己肯定感や将来への意欲向上などの教育効果を数値化して検証も行っている。

アワードでは、地域企業と公立中学校が協働する探究型キャリアプログラムを11年間継続し実践してきたこと、地元で働く社会人を「職業先生」として迎え、地域の実情に即したキャリア観を伝えている点などが評価を受けたという。

山本さんは「最優秀賞を頂けるとは思っていなかったので驚きました。熱い思いを持って未来スクールに関わってくださった皆さまのおかげです」と周囲の支えに感謝。「和歌山には誇りを持って働く大人がたくさんいる。その姿を子どもたちに届けたい。これから自分のことを考え始める、中学生の時期にこのように地域の人たちとリアルな体験ができるのは将来の選択肢を増やすことにもつながると思います」と話している。

受講した生徒からは「失敗してもいいから挑戦してみることが大事だと思った」「職業先生の会社で働いてみたくなった」「和歌山をどこよりも有名にしたい」などの声が寄せられているという。本年度は過去最大規模となる10校での開催を予定。今後は未来スクールを「和歌山市モデル」として市外へ展開することも視野に入れており「地域全体で子どもたちを育てる仕組みをつくりたい。少しでも共感してくれる企業があれば、ぜひ仲間になってほしい」と呼びかけている。