「民のため」梧陵の思い後世へ ミュージカル盛況

梧陵(後列)の呼びかけに応じ、たいまつを手にする村人たち
梧陵(後列)の呼びかけに応じ、たいまつを手にする村人たち

安政南海地震(1854年)の際、稲束に火をつけて広村(現・和歌山県広川町)の住民を津波から救ったとされる実業家・濱口梧陵を題材にしたミュージカル「稲むらに火を!」が5日、海南市の海南ノビノスホールで行われ、約230人が梧陵の生き方に学び、災害への備えの意識を新たにした。

梧陵の功績をたどり、南海トラフ地震などの巨大地震への備えを呼びかけようと、海南万葉の会が主催。劇団KCM、演劇集団和歌山のメンバーらが出演し、脚本・演出は東道(あずま・みち)さん、振り付け・構成はRi-yaさんが手がけた。

劇中では、広村のしょうゆ問屋に生まれた儀兵衛(のちの梧陵)が本家の養子となり66歳で亡くなるまでの生涯を、時代背景とともに紹介。「民のために生きる」との家訓を大切に、地震発生時に津波の襲来を察知し、稲束に火を放って村人を高台へ避難させたこと、被災後の村人の困窮を救おうと、仕事を生み出す目的で私財を投じて堤防を築いたことなどを、団員らが歌や踊りを交えて熱演した。

現在の東京大学医学部の前身となる江戸の西洋医学所(種痘所)を再建するため私財を寄付し、コレラなどの防疫にも尽力。65歳で和歌山県議会初代議長を務めるなど、近代日本の発展に残した足跡を紹介した。

和歌山市の中学生歌手・木谷紳之介さんが少年の頃の儀兵衛を演じ、歌唱も披露。海南市無形民俗文化財の亀の川念仏踊り保存会が特別出演し、舞台に花を添えた。

公演を見た和歌山市の70代の女性は「これまで見たKCMの舞台の中で一番感動した。梧陵さんの交友を含め、もっと知りたい、学びを深めたいと思いました」と感激の様子。海南万葉の会事務局長・劇団KCM代表でもある東さんは「自分のことよりも民のことを考える梧陵さんの思い、和歌山の自然や歴史、伝説を次の世代へと伝えていきたい。子どもたちと一緒に楽しみながら舞台をつくることができました」と笑顔。梧陵を演じた正木吉紀さんは「これまでに演じた役の中でも特に身近に感じられ津波・防災のメッセージを伝えようと、心して臨んだ。エネルギーのやりとりをしながら一つのものをつくり上げる演劇のすごさを、あらためて感じました」と話した。

木谷さんが伸びやかな歌声で魅了
木谷さんが伸びやかな歌声で魅了