徳川頼貞の新作朗読劇 上演へ県民グループ始動

朗読劇に挑戦する「南葵Reader’s voice」の皆さん(南葵音楽文庫普及会提供)
朗読劇に挑戦する「南葵Reader’s voice」の皆さん(南葵音楽文庫普及会提供)

紀州徳川家16代当主・徳川頼貞(1892~1954)の生涯と彼が残した世界的な西洋音楽資料コレクション「南葵音楽文庫」をテーマにした新作朗読劇『音楽の殿様 徳川頼貞ものがたり』が11月15日、和歌山市の県立図書館で初演される。公募により結成された県民12人のグループが出演を予定し、7月11日には最初の練習会が和歌山城ホールで行われた。

基礎練習に取り組む参加者
基礎練習に取り組む参加者

南葵音楽文庫普及会が主催し、新作朗読劇は制作委員会による制作。幼少期からクラシック音楽に親しみ、渡欧を経て音楽が生活に息づく環境に衝撃を受けた徳川頼貞が帰国後、大正から昭和前期にかけて日本初のコンサートホール「南葵楽堂」の建設や、音楽資料を収集、公開する「南葵音楽文庫」の設立などに奔走した足跡を、彼が愛した音楽の生演奏とともに描く。

脚本はライターの小林依子さん、演出は朗読家の福山ひでみさんが担当。出演グループの名称は「南葵Reader’s voice(ナンキ・リーダーズボイス)」に決まった。

初の練習会では、14歳から82歳までの幅広い世代のメンバー12人が初めて顔を合わせた。同普及会の岩橋和廣事務局長が、頼貞の人物像や南葵音楽文庫誕生の経緯などについて説明し、本番の生演奏に出演するソプラノ歌手の瑞樹比美香さんは、同文庫の価値を紹介し、歌声を披露。メンバーは福山さんの指導で、滑舌を鍛えるための早口言葉の読み上げなど、基礎練習に取り組んだ。

グループ最高齢の八神靖範さん(82)=和歌山市東高松=は、読書やコンサートでよく訪れている県立図書館で朗読劇のチラシを見て参加を決めた。「年齢不問と書かれていたので、自分もできるのではないかと思い、すぐに申し込んだ。朗読の経験はなく、南葵音楽文庫もこれまで深く知る機会はなかったが、縁のなかった新しい世界を経験し、世代の違う若い人たちと交わることが健康維持や若返りにもつながると感じている」と話し、意気込んでいる。

練習は毎月2回、全10回を予定。メンバーの約半数は朗読初挑戦で、福山さんは短期間での練習の難しさを感じながらも、「年齢も経験も違う方々が一緒に一つのことを目指す機会はなかなかない素晴らしいこと」とし、「徳川頼貞さんは『文化の力』を信じて私財を投げ打った人だと思う。こんなすごい人が和歌山にいたことを、もっと県民は誇りに思っていい。より多くの皆さんに知ってもらえる朗読劇にしたい」と話している。



初演は11月15日午後3時から。入場無料、申し込み不要。奈良県のグループ「言の葉の羽」による朗読劇『テイチクうたものがたり』も同時上演となる。同作は、昭和9年(1934)に設立され、日本の大衆音楽をリードしてきたテイチクによる、歌謡曲の黎明期を描いた作品で、『徳川頼貞ものがたり』と併せて見ることで、異なるジャンルでほぼ同時期に進んでいた、日本の音楽の夜明けの姿を体験できる。