「黒潮」と「しらす」の関係

前号では、禁漁期間を設けることで海洋資源を守り、持続可能な漁獲を目指すしらす漁の今を取り上げた。一定以上の個体数を維持するための取り組みであるが、漁業者の努力では対応できない自然の力もある。今週は、和歌山の沿岸に魚をもたらす「黒潮」としらすの関係を紹介したい。
和歌山のしらすの旬は、春と秋の2回。3月から5月ごろにかけて取れる「春しらす」はふわふわとした軽い食感、9月から10月にかけて取れる「秋しらす」は身が引き締まり、しっかりとした食感を楽しめるのが特徴。春しらすは冬生まれ、秋しらすは春生まれの稚魚が成長したもので、いずれも日本の西の海域で生まれ、黒潮に乗って沿岸に流されてくる。
しらすの漁獲において深く関係する黒潮であるが、近年、大蛇行によりさまざまな魚の不漁が起きたという記憶がある方もいらっしゃるだろう。2017年8月から2025年4月にかけて7年9カ月に及ぶ「黒潮大蛇行」は県内の漁業に影響を及ぼし、しらすも例外ではなかった。
黒潮は日本の南岸を南西から北東に向かって流れる強い海流。幅約100㌔㍍、深さ約1000㍍、流速は速いところで毎秒2㍍に達する世界最大規模と称される暖流で、その名は私たちにとってなじみ深い。
気象庁によると蛇行の定義として「潮岬で黒潮が安定して離岸していること」としており、通常は黒潮が潮岬に着岸している。暖かい海域を好むマグロやカツオが近海で取れる理由の一つである。1965年以降の記録で、大蛇行はこれまでに6回発生しているが、その原因は未だ解明されていない。
現在、大蛇行は終息し、しらすも一定の漁獲量が見込まれる。秋の旬を迎えるしらす。しっかりとしたその味わいを楽しみたい。(次田尚弘/和歌山市)

