9月1日~田中恭吉生誕120年記念展 近大美術館

 珠玉の作品を残し23歳で死去した和歌山市生まれの画家・田中恭吉(1892~1915)の、生誕120年を記念する展覧会が9月1日から10月14日まで、同市吹上の県立近代美術館で開かれる。雑誌『月映(つくはえ)』のための木版画や、ペン画『心原幽趣』などの代表作の他、初公開資料を含む約300点が展示される。

 田中は18歳で上京し、白馬会原町洋画研究所を経て東京美術学校に入学。竹久夢二らと親交を結び、絵画と詩作において注目すべき作品を生み出した。

 同館主査学芸員の井上芳子さんは、「田中の創作を高める契機となったのは、皮肉なことに病魔に襲われたことでした」と話す。

 死への不安や恐れ、生命の営みを続ける植物や自然に向けたまなざしを、ペン画の鋭い線や自刻の木版画で表現。親友の恩地孝四郎や藤森静雄と制作した詩と版画の雑誌『月映』は、近代版画の草創期を彩る作品集となった。

 また『心原幽趣』は、萩原朔太郎の第一詩集『月に吠える』の挿絵として生前に引き受けたペン画。恩地の装丁により収載され、萩原の詩の世界と不思議なまでに一致し人々を驚嘆させた。

 午前9時半から午後5時。月曜休館(祝日の場合は開館し翌日休館)。一般500円、大学生300円、高校生以下・65歳以上・障害者・県内の外国人留(就)学生は無料。

 講演会「田中恭吉の生涯と作品」(井上学芸員)が9月17日、講演会「田中恭吉の秘密 画材と表現」(紙本保存修復家の坂本雅美さん)が10月8日に開かれる。いずれも午後2時から同館2階で。フロアレクチャーは9月1日と30日の午後2時から、展示室で。

 問い合わせは同館(℡073・436・8690)。