負担少ない大動脈瘤治療 医大病院に専門医

 開腹・開胸外科手術に比べて患者への身体的な負担が少ないという大動脈瘤(どうみゃくりゅう)の新しい治療法 「ステントグラフト内挿術」 が全国的に広まってきている。 県内で唯一専門医・指導医が在籍し、 治療に必要な実施施設認定基準を満たしている県立医大付属病院の放射線科では、 平成11年から現在 (9月) まで194人の実績があり、 治療を受ける患者は年々増えてきている。

 動脈瘤とは、 血管の壁が薄くなってこぶ状に大きく膨らむ病気。 ほとんどが無症状だが、 破裂すると命に危険が伴う。 瘤(りゅう)ができてしまうと自然に縮小することはなく、 現在有効な薬物治療もないという。 一般に高血圧や喫煙などが要因となり、 60代から70代の男性に発症することが多いという。

 従来は、 瘤ができると全身麻酔下で開腹・開胸手術を行い、患部を切除し、人工血管に置き換える治療法が行われてきた。 しかし、開腹や開胸による体への負担が非常に大きく、 高齢者などは回復にも時間がかかり、 術後、 肺炎や腸閉塞などの危険性もある。

 ステントグラフト内挿術は、 血管内治療の一つで、 足の付け根を5㌢ほど切開し、 ステントといわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管を挿入し、 患部に装着。 動脈瘤にかかる圧力が低下することで瘤の拡大や破裂を防ぐことができる。 治療の歴史が浅いため、 長期(20年以上)成績がまだ出ておらず、 術後に追加の血管内治療が必要になる可能性もあるが、 開腹・開胸の必要がないので、 体への負担が極めて少なく、 高齢者や心疾患などの病気がある人でも安全に治療を受けることができる。 傷口は小さいため翌日から歩くことも可能だという。

 ステントグラフト内挿術の治療には、 術前の正確な動脈径の計測が不可欠で、 熟練したカテーテル技術が必要。 同大学では、 同科の佐藤守男教授(62)・中井資貴助教(42)を中心に、 心臓血管外科医と一緒に5人の医師が治療に当たっている。 中井助教は 「トレーニングを積んだ医師が治療しています。 高齢の人でも安心して、 安全に手術を受けられます」、 佐藤教授は 「体に優しく、 かつ有効で効果的な治療を提供できます」 と話している。

 手術は毎週火曜日に行われている。 問い合わせは同病院 (℡073・447・2300)。