どうなる馬券売場設置 賛否に揺れる本町地区

 和歌山市米屋町の「ぶらくり丁ブリスビル」に地方競馬の場外馬券売場設置が計画されている問題で、設置事業者の㈱キャンター(兵庫県尼崎市)は12日、市に事業計画書を提示した。設置許可は農林水産省が行い、地元首長、議会、住民が反対していないことが前提。同社は本町地区連合自治会の同意があるとしているが、反対する単位自治会も複数あり、市の対応と今後の動向が注目される。

 計画書によると、施設の名称は「DASH和歌山」(仮称)で、同ビル地下に設置し、兵庫県競馬組合が運営する園田・姫路競馬場などの馬券を販売する。年間発売日数は210日、営業時間は午前10時~午後5時半(ナイター競馬実施時は午後2~9時)を予定。年間の来場者は21万人、売り上げは8億7000万円を見込んでいる。

 かつてボートピア設置計画でも揺れた本町地区では、今回の計画について住民の賛否は分かれている。子どもたちへの教育上の悪影響や治安悪化の心配などを理由に、一部の単位自治会や学校PTAなどが計7回、市に設置反対の要望書を提出。一方で、966人分の賛成署名も提出されている。

 同地区連合自治会は7月、全36単位自治会に書面で計画への賛否を問い、賛成14、反対13、連合自治会長一任7、無回答2の結果を得た。これを受けて計画書では、連合自治会と設置場所を含む単位自治会の同意があるとしている。

 しかし、反対する単位自治会には、連合自治会長が役員会、総会を開かずに書面で回答を集めた手法を「独断」と批判する声もあり、地元の「同意」をめぐる地区内の見解の間には溝がある。

 計画書の提示を受けて発表された大橋建一市長のコメントでは、連合自治会と施設が立地する単位自治会は同意しているとの認識を示し、「農林水産省の場外施設の設置承認の基準に基づき関係書類を精査してまいりたい」としている。

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 ぶらくり丁内の商店の女性従業員(54)は「子どもたちが通学する場所なので設置には反対」と話し、別の女性従業員(36)は「この辺りの客層は高齢者や子ども連れが多く、ブリスビルには老人ホームも入っているし、(馬券売場は)場違いな気がする。でも、人を集めたいのも分かる」と複雑な心境をのぞかせた。

 別の商店主の男性(59)は「教育上よくないというのも分かるが、ぶらくり丁は住宅地ではなく商業地。昔のように人が通ってほしい。いろいろなアイデアを出して、共存共栄できればと思う」と話していた。