トラムと融合した中心市街地 フランス・ボルドーのまちづくり

 岸村敏充さんは、慶応大学に在学し地方都市の活性化について研究している。その彼がフランスを旅し、魅力的な中心市街地づくりの事例に触れたという。今週は岸村さんのリポートを紹介したい。

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 ここはフランスの南西部に位置する都市、ボルドー。人口約23万人、アキテーヌ地域圏ジロンド県の県庁所在地にあたり、ワインの産地として有名。役所や教会が建ち並ぶ中心市街地では、トラム(路面電車)がまるでミミズのように身をくねらせ走っている。歴史の趣のある教会に整備された石畳。そこに多重連結のトラムが走る。それでいて違和感がないのはなぜか。

 それは架線を張らず地表集電方式(APS)を採用していることに起因している。当初、地下鉄建設が検討されたがコストが高いこともあり、街や市民との親和性を重視しトラムを採用。歴史地区の景観を乱さぬよう配慮されたトラムは2003年の開業以来、大勢の市民が利用し都市圏へと路線を拡大させている。

 トラムを実際に利用してみたが極めて便利。数分間隔で運行され、立ち客が多数出るほどの乗車率だ。ビジネス客、観光客、都市圏からの買い物客など、用途はさまざま。平日の午後にもかかわらず沿線のオープンカフェで談笑する人々であふれ、どこか落ち着いた、その街の魅力が集積された中心市街地がここにあった。(岸村敏充/フランス・ボルドー)

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 和歌山市に例えれば本町や公園前にあたるような場所。郊外や市外からも訪れたくなるまちづくりが行われているモデルケースとして紹介させていただいた。       (次田尚弘)