ゆとりある豊かな旅づくり  高齢者向けツアーの魅力

 前々号からフランスを旅した岸村さんのリポートを紹介している。岸村さんは祖母と共に高齢者向けのツアーに参加し、さまざまな気付きを持ったという。

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 今回、私は83歳になる祖母に付き添い、ニッコウトラベル(東京都中央区)が企画・実施する高齢者向けの旅に参加した。同社のこだわりは一日のバス乗車時間を3時間までに設定していること。バリアフリー化された特別車を導入し、一般的に約10日間の行程を14日間かけて巡る。

 この旅を企画し添乗員を務めた同社の辻井麻里さんは「体への負担を少なくすることによって実現するゆとりのあるスケジューリングで、観光地の魅力に深くふれてもらえるように心掛けています」と話していた。また、高齢者でも食べやすい食事を選び、旅の中盤ではおかゆの提供、観光地ではトイレの位置を頻繁に案内するなど、うれしい気配りがたくさんあった。

 観光バスの専属運転手のアルフレッドさんは現地でえりすぐりの方。運転はもちろん、乗降者の介助など、きめ細やかなサービスが印象的だった。

 旅の参加者は19人。ほとんどが70歳以上の方々だが、誰一人として体調を崩すことはなく満足度も上々。従来のツアーの枠を超え、あえて時間をかけ、旅行社のホスピタリティにより生まれる旅の価値を強く感じた。
   (岸村敏充/フランス)

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 県では公衆トイレの整備や観光案内板の多言語化など、おもてなし体制の充実と情報発信を図ろうとしている。滞在時間をより長く、地域の魅力にふれてもらえるという、ゆとりあるツアーを多く迎え入れる準備が、和歌山でも進んでいる。        (次田尚弘)