新制作展/初出展、入選の快挙 和歌川町の藤谷さん
和歌山市和歌川町の藤谷万里子さん(65)が、30日まで東京の国立新美術館で開催中の第77回「新制作展」で、初出展、初入選の快挙を果たした。厳しい審査で知られる同展で、初出展・初入選は極めて珍しいという。藤谷さんは「奇跡的なこと。これからも日々の積み重ねを大切に、生涯を通じて描いていきたいです」と笑顔で話している。
新制作展は、新制作協会が主宰する公募展。同協会は昭和11年、猪熊弦一郎や小磯良平らが反アカデミック、新芸術を掲げて創立。現在は絵画部、彫刻部、スペースデザイン部の3部門がある。
入選作品は「私のVERONE(ベローナ)Ⅱ」。190㌢×130㌢の油彩画で、かつて旅行したイタリアの、石造りの家々が迷路のように密集した街並みを描いたもの。
朱色一色を塗り重ねた上に、黒のボールペンと極細のマジックペンで一本ずつ線を重ねた緻密な作品。建物の屋根や樹木が丁寧に描かれ、まるでレース編みや刺繍(ししゅう)を施すかのような細やかさがある。
音楽が聴こえてきそうな雰囲気を表現したかったという藤谷さんは「オレンジ色は夕焼けの色、屋根の色など、自由に想像していただけたら」と笑顔。
藤谷さんはこれまで海南市展で市長賞や知事賞を受賞。県展での入選は9回を数える。25年ほど前に絵を習い始め、雄湊小学校の恩師で洋画家の児嶋義一さんらに指導を受けた。
平成21年に児嶋さん亡き後は、海南市美術家協会の会長でもある坂口卓平さんに指導を受け、今回、本展へのテーマや方向性などアドバイスをもらいながら、これまでの画風を一新した作品で挑戦し、見事入選を果たしたという。
藤谷さんは「ご指導いただき、本展に出す勇気をいただいた坂口先生には大変感謝しています。やっと出発点に立ったところで、これからが勝負」とし、「今後は、和歌山の風景なども描いていければ」と話している。
新制作京都展は10月19日から29日まで京都市美術館で開かれ、藤谷さんの作品も展示される。
藤谷さん