法人税率引き下げをどう考えるか 格差反映する地方税の廃止を
安倍内閣の成長戦略の目玉が法人税率の引き下げです。その理由は、「今の日本の法人税実効税率は35%強であり、仏の33%、独の29%、英の23%などと比べて高過ぎる。アジアでは、中国25%、韓国24%、シンガポール17%となっており、少なくとも20%台にしなければ企業が日本から逃げていく」というものです。減税には当然、財源が必要ですが、そのめどが立たないので、それは年末に先送りするようです。
さあ、これをどう考えるか?
私は、法人税そのものを引き下げることには賛成です。まず、法人というのは抽象的な存在で、個人とはまったく違います。そのような中間的な存在に課税をすることは好ましくありません。その上、課税対象は売上から経費を引いたものですから、節税や脱税が行われやすく、消費課税や固定資産税などに比べて、不公平感が強い税です。従って、民主党政権の時に、私も党税調の役員として13年ぶりの法人税率引き下げのために頑張りました。ただし、その時には財源対策にも大汗をかきました。
法人税を減税するためには代替の財源が必要です。安倍内閣からは「減税して景気が良くなれば税収も増えるから、それを財源にしたら」という声が聞こえてきます。これには驚きました。税収は景気が良くなれば増えますが、景気が悪くなれば減ります。そんなええ加減な税収見込みを恒久財源にすることはあり得ません。運よく税収が上に振れれば、それを借金返済にまわすべきです。小学生でもわかる理屈です。
法人税には租税特別措置などの企業優遇制度がたくさんあります。私が勤めていたトヨタ自動車やキャノンなども実際の税率は20%程度だという推計がありました。ですから、税率を引下げるためには、これらの優遇制度を廃止し、課税ベースを広げるべきです。
しかし、本当の問題は「実効税率」の意味にあります。法人税の「実効税率」とは国税と地方税の合計です。日本の35%強は、国税の25・5%と地方法人税の合計です。国の法人税は既に25・5%まで低くなっています。英、仏、中国、シンガポールなどには地方法人税はありません。国税だけを比べると、日本の25・5%は決して高くありません。
法人税が高くて困るのなら、地方法人税を廃止するべきです。法人税は景気の動向に大きく左右されますから、不安定な財源です。しかも、東京一極集中の現状を考えれば、地方法人税は地域による経済格差を反映する不公平な税制です。地方法人税を全廃して、実効税率を下げ、その財源には地方消費税などをあてることを正面から検討すべきです。財源の手当てもなく、減税論議をしているような財政状態でないことは国民の多くが知っています。ちなみに、お金に色はついていませんから、財源なしに法人税を減税すれば、結局、消費税の増税で企業の減税をしたことになってしまいます。