93歳で初の絵画展 本町の亀井さん
90歳を過ぎて絵画を習い始めた和歌山市本町の亀井百合子さん(93)が9月6、7の両日、同市の市民会館展示室で初の個展を開く。「90の手習い」で始めた水彩画を生き生きと楽しむ亀井さんは「展覧会をするなんて夢にも思わなかったこと。素人のお恥ずかしい絵ですが、皆さんにお会いしていろんなお話をしたいです。気楽にお越しください」と話している。
農家に生まれ、7人きょうだいの長女として育った亀井さん。絵を描くなど特別なことで、筆を握ったことはなかったという。
約10年前に脳梗塞で倒れてからは左半身が不自由だが、何事にも意欲的な亀井さんの姿に、主治医も「こちらの方が力をもらいます」と話すほど。
原動力となっているのは、知人のシスターの「あなたは体が病気でも、心は健康です。何かをして元気に頑張ってください」という言葉。亀井さんは「なんでこんな病気にと、気の晴れたことはなかったけど、ただ何となく生きるのではなく自分ができることを考えてみました」とほほ笑む。
絵を描くきっかけは、知人で元中学校の美術教諭、中東照茂さん(64)の絵画展を訪れたこと。鮮烈な赤を基調にした作品に「こんな絵を描きたい」と心揺さぶられた。
昨年の秋から知人に絵を習い始め、いまは週に一度、中東さんに教わっている。描くのは、かつて訪れた大好きな富士山や鳥、花や野菜など。もともと左利きだったが、利き手ではない右手で仕上げている。点描や着色も感性豊かで、指導する中東さんも「色彩感覚が素晴らしい」と目を細める。
亀井さんは「おかげさまで、不自由ながらごく普通の生活が送れることに感謝です」と話し、いつも温かく励まし支えてくれる医師や介護施設のスタッフら、たくさんの人に感謝を伝えたいと個展の準備を進めてきた。
「農家で毎日が精いっぱいの生活で、余裕もなかった。いま絵を描かせてもらえるのは一番の幸せ」。今後は写生に出掛けたり、富士山の大きな作品を描いてみたいという。
展覧会では水彩画十数点、俳句や川柳、ビーズアクセサリーなど約80点を展示する。6日は午前10時半~午後5時、7日は午前10時~午後4時半。