紀伊半島を横断する歴史の道 国道166号「和歌山街道」

 秋の行楽シーズンの到来。9月14日から展開されている「わかやまDC」とも重なり、例年より観光客が目立つ。わかやまDCのキャッチコピー「和歌山からはじまる旅」にあるように、「熊野詣で」や「お伊勢参り」は日本人の旅の原点といわれている。これらの巡礼の旅路として栄え、今もなおその名残が残る道「和歌山街道」を紹介したい。

 和歌山街道は国道166号線の三重県内の区間(高見峠―松阪市)を指し、市販の道路地図などにも表記がある。紀伊半島を横断し、江戸時代には紀州藩の本城である和歌山城と東の領地にあたる松阪城を結び、参勤交代にも使われた。熊野詣で、お伊勢参り、吉野詣での巡礼道や南紀・伊勢志摩の海産物を大和へ運ぶ交易路としても栄えたという。

 和歌山街道の西の起点で、奈良県と三重県の県境に位置する高見峠への入口「高見トンネル」を訪れた。昭和59年に同トンネルが開通したことで、現在は自動車で快適に通行できるが、旧道となっている従来の峠道の走行は容易ではない。松阪の出身で紀州藩に仕官した本居宣長もこの街道を通ったという。宣長が初めて和歌山城へ向かう道中、高見峠で「白雲の峰は隠れて高見山見えぬもみちの色ぞゆかしき」という歌を詠んでいる。高見山に雲がかかり紅葉を望めなかったという言葉の裏に、故郷から離れた和歌山の地への期待と不安の気持ちが込められたのかもしれない。

 歴史が詰まった和歌山街道は紅葉も楽しめる道。高見トンネル付近は標高が高く10月下旬が見ごろ。和歌山から松阪方面へ向かう機会があれば利用してみては。  (次田尚弘/三重)

和歌山街道の起点「高見トンネル」

和歌山街道の起点「高見トンネル」