津波の「逃げ地図」 建築家協会が作成
南海トラフ巨大地震による津波から人的被害を防ごうと、公益社団法人日本建築家協会(JIA)近畿支部和歌山地域会(島桐子会長)は、県内沿岸部で浸水が想定される地域外まで逃げるための道筋と所要時間を地図上に示した「避難地形時間地図(逃げ地図)」の作成に取り組んでいる。平成27年度中の完成を目指し、各市町村に防災の資料として提供していく。
逃げ地図とは、行政が作成した津波のハザードマップを基に浸水の危険性がある地域を選び、高齢者がゆっくりと歩いて安全な場所にたどり着ける時間を3分(129㍍)ごとに緑や黄色などで色分けし、避難時間・方向をひと目で分かりやすく示したもの。地図を活用することで、地域での避難訓練や津波避難タワー設置場所の検討、ルートの整備などに役立てることができる。
同会は、会員の職能を生かした社会貢献をしようと逃げ地図を考案。日建設計ボランティア部が開発した、津波から逃げるためのツールが活用されている。
会員たちは、昨年から県内沿岸部の自治体に呼び掛け、地図の作成を開始。ことし1月には印南町と美浜町に完成した地図を提供し、防災協定を結んだ。
今月23日、和歌山市ト半町の県建築士会館で逃げ地図作成のワークショップが開かれた。会員たちは地図の上に透明フィルムを敷き、非浸水地域に通じる道と浸水ラインが交わる箇所に避難目標ポイントを設定。色分けをしながら作業を進め、海南市、有田市、湯浅町の地図を完成させた。その後、パソコンへのデータの取り込みについて話し合った。
同会は、自治体が地元住民とワークショップを開き、実際に歩いて新たな逃げ道や地元の情報を書き足すなどし、地域独自の逃げ地図を作り上げることや、避難施設や避難計画の再検討などに活用できるとしている。
島会長は「防災対策の話が毎日のように聞かれる。逃げ地図を作成する仕事は急務だと思っている。完成させ、役立ててもらえるように作業を進めていく」と話している。