旧県庁跡での体験 平井さん大空襲を語る
昭和20年7月9日の「和歌山大空襲」体験者が語る「7・9和歌山大空襲を語り継ぐ文化のつどい」が9日、和歌山市九番丁の市教育会館で開かれ、同市東高松の平井章夫さん(83)が「旧県庁跡の奇跡」と題し、自らの体験を語った。
「7・9和歌山大空襲を語りつぐ会」が主催。当時13歳で八番丁に住んでいた平井さんはあの日、午前0時前に始まった空襲であちらこちらに火の手が上がる中、避難場所になっていた旧県庁跡へ逃げた。
涼しい風が吹き、「これは気持ちいい」と思った瞬間、台風のような強い風が起こり、周辺にいた人たちも巻き上げられ、一面火の海になったという。
平井さんは石や火の粉が入り混じった風に目も開けられず、必死になって身を伏せていたという。旧県庁跡では748人が犠牲になった。
背中にやけどを負った平井さんはトラックに乗せられ、臨時の病院となった新和歌浦の旅館へ運ばれた。そこでは全身にやけどを負った人や重症者のうめき声が響いていた。「静かになったな」と思ったときには、息を引き取っている、という日々が何日も続いたという。
平井さんは「後に知人から『和歌浦のトンネルをくぐると、やけどで入院している人の膿(うみ)のにおいが充満していた』と聞いた」とその壮絶さを語り、「私のような経験を二度とさせないよう願い、語り継いでいきたい」と話した。