認知症の徘徊対応訓練 島橋地区で市内初

 認知症による徘徊(はいかい)で行方不明になる人が増加している問題を受け、和歌山市内で初めての「徘徊模擬訓練」が21日、島橋地区で行われた。河西田村病院(島橋東ノ丁)が主催し、自治会員、民生委員、医療・介護関係者ら約50人が参加。認知症の人を支える地域づくりに向けて意識を高めた。

 同様の訓練は福岡県大牟田市で平成14年度に始まり、現在では全国的に行われている。警察庁のデータによると、認知症による徘徊行方不明者は増加傾向にあり、昨年は全国で1万783人(前年比4・5%増)。多くは無事に保護されているが、429人が死亡、168人が行方不明のまま。同病院によると、島橋地区でも年に数人は一時行方不明になる事例があるという。

 同病院の職員が昨年、大牟田市の訓練に参加し、和歌山市でも広めたいと地域の協力を得て初めて実施した。

 病院に集合した参加者は、認知症の人への接し方について「声を掛ける時は横側から」「ゆっくり、優しい口調で」などと説明を受けた後、グループに分かれて出発。地域包括支援センターからファクスや無料通信アプリ「LINE」で発信された服装などの情報を基に、地区内を歩く徘徊者役を探して歩いた。

 民生委員らのグループは出発から40分近く探して道端に座り込んでいた徘徊者役を見つけた。一人ずつ「どうしたん」「どこ行くん」などと優しく声を掛け、病院の方へと誘導していった。

 訓練は今後も年に1回続けていく。同病院の川口敬之事務長は「この訓練が市内全域に広がることが目標。関心のある地区の方には協力しますので、ぜひ実施してほしい」と呼び掛けている。

 問い合わせは同病院(℡073・455・1015)へ。

座り込んだ徘徊者役を見つけ、声を掛ける参加者

座り込んだ徘徊者役を見つけ、声を掛ける参加者