谷崎潤一郎の旧宅を移築・公開 有田川町

文豪・谷崎潤一郎(1886~1965)が小説『痴人の愛』を執筆した場所として知られる木造の旧宅(通称=ナオミの家)が、有田川町植野に移築・復元され、一般公開されている。

谷崎の旧宅は、同作品に登場する主人公の妻・ナオミの名前から「ナオミの家」と呼ばれ、元は神戸市東灘区にあった。平成18年に取り壊されることになり、谷崎文学の研究家で武庫川女子大学のたつみ都志教授を中心に保存運動が始められた。

たつみ教授の熱意に打たれ、有田川町出身で兵庫県の建築・材木会社社長・則岡宏牟さんが旧宅の解体・移築事業を申し出た。谷崎ゆかりの阪神間で移築先を探したが該当地は見つからず、谷崎没後50年が経過し、これ以上移築時期は延ばせないとして、則岡さんが集めたクラシックカーやヴィンテージバイクが保管されている施設「和歌山牟三荘」の隣に移築することになった。

ナオミの家は緑青色の屋根が目を引く洋風平屋建て、約50平方㍍の広さで、邸内には洋間3室と土間がある。

一般公開初日となった19日、式典が行われ、則岡さんやたつみ教授、仁坂吉伸知事らがテープカットで祝福した。

則岡さんは集まった谷崎文学ファンらを前に「ナオミの家を通してどのような気持ちで『痴人の愛』を執筆したかを体感してほしい」とあいさつ。たつみ教授は「100年前にタイムスリップした気持ちで谷崎の見た風景を想像してほしい」と呼び掛けた。

ナオミの家の一般公開は日曜日(27日と1月3日は閉館予定)の午前10時から午後4時まで。入場は無料。

一般公開が始まったナオミの家

一般公開が始まったナオミの家