市街化調整区域の立地見直しへ 和歌山市
優良農地を守り、宅地の拡散を防止し、将来的な行政コストの抑制を目指す和歌山市のコンパクトシティー化構想。その指針となる「市街化調整区域における立地基準の見直し」を含む市条例の一部改正案が23日の市議会本会議で採決される。成立すれば7月1日(一部来年4月1日)に施行され、一部の条件を除いて、市街化調整区域内での農地から宅地への開発はできなくなる。
尾花正啓市長が昨年8月6日に条例改正の方針を発表した後、9月1日から10月15日にかけてパブリックコメントを実施。市民からは15件の意見が寄せられ、「市街化調整区域内の農地を宅地にできなくなった場合、宅地にできる市街化区域の地価上昇や、高い固定資産税を嫌って、若者が市外に転出してしまう」などと、規制強化を懸念する声が多かった。
市は、パブリックコメントの結果を受けて、市街化区域に隣接する岩橋、神前、小倉、冬野などの指定集落区域については、今後も継続して開発を認めるように転換。また、市街化調整区域内でも、市長が告示した小学校、支所、連絡所、保育所(園)、幼稚園、文化会館の複数の公共公益施設が存在する場合、各施設を中心とした半径300㍍以内で、50戸連たんし、建築物から50㍍の間隔で挟まれていれば、農地から宅地に転用を可能にする。
鉄道駅周辺の区域については、これまでの駅周辺300㍍内の開発基準を、和歌山南インターチェンジ付近になる交通センター前駅と、すでに開発が進んでいる布施屋駅を除き、駅から原則半径100㍍内に規制を強化する。
さらに、まちなかへの誘客を実現するため、インターチェンジ周辺の区域や国道26号沿道の区域(市北部県境付近)、「和佐山口線」「西脇山口線」「市駅小倉線」「和歌山橋本線」の主要幹線道路の沿道区域について、店舗、飲食店の立地許可を除外して市街化区域に立地を誘導する。
市街化調整区域内でも、例外として分家住宅、農業者住宅、コンビニエンスストアなど日常生活上必要な店舗、沿道のガソリンスタンドなど給油所や休憩所、既存工場の拡張は認められる。
農地転用抑制策については、市街地の拡大や優良農地が虫食い状に転用されるのを防ぐため、県が「優良農地の転用は原則認めない」として掲げた政策「守ります、まちと優良農地」が、「農家の利益の侵害につながる」「人口流出が加速する」など県議らの強い反発を受け、今月9日に仁坂吉伸知事が撤回する一幕があった。
今市議会の一般質問でも、宇治田清治議員から知事の撤回発言の影響について質問があったが、尾花市長は「都市計画法の規定に従い、優良な集団農地や優良農地における宅地開発を原則認めていないため、上程した開発条例の改正内容が影響を受けることはない」と答弁し、方針変更の必要性はないと強調した。