早期発見、治療訴え 国立がん研究セ講座
日本人の死因の第1位、全体の約3割を占める「がん」への理解を深めるセミナー「がんの時代を生きる」が6日、和歌山市の県民文化会館で開かれた。国立がん研究センターなどが主催し、従来は都市部で実施してきたもので、ことしは地域課題解決型セミナーとして、和歌山を含む4県で行う。
同センターがん対策情報センターと第一生命保険㈱が主催。両者は平成24年にがんの情報提供について包括連携協定を結んでいる。
今回のセミナーでは、同センターの若尾文彦センター長が「知れば安心がん情報」、県立医科大学の上田弘樹准教授が「和歌山県のがんの状況と県内のがん診療体制」と題してそれぞれ講演。約200人が参加した。
若尾センター長は年間約80万人ががんになり、約36万人ががんで亡くなっていることを紹介。がんの発見から5年以内の生存率は約62%に達することから、過度に恐れず、早期の発見・治療が必要と訴えた。若尾センター長によると、ストレスの蓄積とがんの罹患には因果関係がなく、禁煙▽控えめな飲酒▽週1日以上の運動▽健康的な食事▽適正体重の維持――などを実践することで、がんにかかるリスクが約4割低下するという。
がん検診の受診率について若尾センター長は、日本の受診率が世界的に見て低い事実を指摘。職場などでの積極的な受診を呼び掛けるとともに、日頃から報道や書籍などを通じて情報を得ることが治療の成否を左右すると話した。
続いて講演した上田准教授は、県内のがん患者の約3人に1人を働く世代(現役世代)が占めていると指摘。死亡率はピークだった約25年前に比べて改善しつつあるが、一層の低下を図るため、現在は約7割である2次検診受診率を9割以上に向上させたいと語った。
県内の診療体制については、九つの拠点病院があり、手術・抗がん剤・放射線・緩和ケアの四つの方法を中心に治療に当たっていると説明。職種の違いを越えチームとして治療・ケアに取り組むことが重要と話した。
参加した海南市の三崎操さんは「知人ががんと闘っており、参考になるのではと思って参加しました。チームでがん治療に当たっていると聞いて驚きました」と話していた。