支援団体が再審訴え 人工呼吸器外し事件
平成15年5月に滋賀県東近江市の病院で入院患者の男性(当時72)が人工呼吸器を外され死亡した事件で、殺人罪で懲役12年の刑が確定し、和歌山刑務所に収監されている元看護助手・西山美香受刑者(35)=再審請求中=の支援団体「西山美香さんを支える会」のメンバーが1日、和歌山市の市教育会館で同事件についての学習会を開いた。
同事件は同年5月22日午前4時30分ごろ、男性が心肺停止状態に陥っているのを西山受刑者と当直の看護師が発見。男性は3時間後に死亡した。看護師が人工呼吸器のチューブが外れていたと証言したことから、捜査はチューブの不接続を知らせるアラームが鳴っていたかどうかを主な争点に進行。支える会の伊藤正一代表によると、看護師らに対する警察の追及は厳しく、精神的に追い込まれると自暴自棄になりがちだった西山受刑者は、取り調べに対して自身がチューブを外し、消音ボタンを使ってアラームの音を消したと自白したという。
事件は犯行の目撃者や物的証拠がなく、裁判は自白の信用性が争点となった。35通もの供述調書が作成されたが、その内容は変化が激しく、伊藤代表は「著しく一貫性に欠ける」と指摘。男性に対する酸素の供給が停止した時間は2~3分とされているが、科学的基準では酸素の供給が停止してから心臓が停止するまでに健康な人で約14分程度かかるという。加えて、調書の中で西山受刑者は、死亡する直前の男性の状態を具体的に述べているが、すでに男性は半年以上脳機能が消失しており、供述にあるような内容はあり得ないとの見解を示した。
平成19年に最高裁で刑が確定して以降、支える会を中心に再審開始を求めて支援活動に取り組んでいる。現在、大阪高裁に第2次再審請求を行っているが、請求から約1年が経過しても具体的な動きはないという。
伊藤代表は「無罪の決定的証拠がなければ再審に応じようとしない。疑わしきは被告人の利益に、の原則に立った裁判をしてほしい」と訴え、参加した和歌山市の女性は「事件を初めて知りましたが、取り調べに納得できない点が多く、応援しようと思いました」と話していた。