司法環境の充実を 日弁連が橋本でシンポ

地域の司法環境を考える日本弁護士連合会主催のシンポジウム「地域司法キャラバンin伊都橋本~地家裁支部の設置を目指して~」がこのほど、橋本市で開かれ、伊都橋本地域への裁判所支部の新設や開廷日の増加について、基調報告とパネルディスカッションが行われた。

開会あいさつで、和歌山弁護士会の田中博章副会長は「小都市では発生する事件の件数は少ないが、裁判所が関わる問題は多い。平和な地域を実現するためにも身近に裁判所が必要」と強調。平木哲朗橋本市長は「昨年は最高裁に陳情したが、反応は厳しかった。住民の高齢化が進む中、負担の増大に苦しんでいる」と窮状を訴えた。

基調報告では、同会司法制度調査対策委員会の西直哉副委員長が同地域の司法を取り巻く現状を解説。約9万人の人口を抱えながら、簡易裁判所と和歌山家裁妙寺出張所(かつらぎ町)しかなく、同出張所は月に1日しか開廷しないため、1時間以上をかけて和歌山市の地家裁本庁に足を運ぶ人が多い現実を説明した。

司法へのアクセスを巡る同様の問題は各地で発生しており、日弁連裁判官制度改革・地域司法計画推進本部の赤羽宏副本部長は、おととし10月~昨年12月に最高裁と日弁連が行った協議の結果を報告。「新たに労働審判を実施できる地裁支部が増えるなど、司法に関する予算が減る中で最高裁も司法基盤の整備に意欲を見せている。働き掛けを強めていこう」と呼び掛けた。

徳島弁護士会の志摩恭臣さんは、池田出張所(三好市)の開廷日数が月1日から2日に増加するまでの経過を紹介。開廷日が少ないことの弊害として、当事者や弁護士の都合次第で期日が数カ月先になること、待合室の混雑が激しいことなどを指摘。開廷日の増加を実現するために、地元首長への積極的な働き掛けやシンポジウムを開くなどしたと話し、地方紙を通じた世論喚起の事例も紹介した。

パネルディスカッションでは、赤羽さんと志摩さん、和歌山弁護士会の藤井幹雄会長らも加わり、意見を交わした。

藤井会長は「和歌山と橋本では少年非行の特徴が異なるという話も聞く。妙寺の受け付け能力は限界に近い。今後は支部新設や開廷日増加の実現に向け、地元議会との協議にも力を入れたい」と意気込みを語った。

参加した有田市の男性は「司法と住民の距離に関心を持っています。伊都橋本は人口の割に司法拠点が少なく、支部の必要性を痛感しました」と話した。

意見を交換するパネリストら

意見を交換するパネリストら