「群像」に交錯する声 近代美術館特集展
一つの画面に、複数の人物を表現した「群像」作品を中心に紹介する特集展示「群像―交錯する声」が5月7日まで、県立近代美術館(和歌山市吹上)で開かれている。
大正から昭和、平成にかけての絵画や立体など29作家の47点を展示。同館の藤本真名美学芸員は「作品に表現された人々の姿を追う中で、当時の社会的な背景が浮かび上がってきます。たくさんの人が描かれた作品や、他者との関係性を通じて、一人の『私』についても考えてもらう機会になれば」と話している。
展示作品のうち、複数の人体を組み合わせ、構図を研究したことがうかがえる川口軌外の「夏の海」は、夏の記憶の余韻を残し、自身の成長の過程を一枚に描き込んだ松本竣介の「三人」からは、戦時下をたくましく生きる力強さが伝わる。
また、太地町出身で米国に移民として渡った石垣栄太郎の「街」は、第一次世界大戦後の混乱した社会状況を、まちを行き交う人々に重ねて描写。その他、それぞれの人物の配置や表情、動きなどに注目すると、描かれた一人ひとりの声が聞こえてきそうな作品ばかり。
村井正誠や宇佐美圭司の、人の姿を抽象化した作品も並び、藤本学芸員は「そこに描かれているのは、人と人の関係性。私たちが集団の中に身を置いたときに、他者とどう向き合うか、あらためて問い掛けているように思います」と話している。
学芸員による展示解説は3月20日、4月16日、5月6日午後2時から。小学生向けの鑑賞会は4月22日午後2時から。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。