家康紀行⑧岡崎を代表する「家康行列」

前号では、徳川家の菩提寺で歴代将軍の位牌を祭る「大樹寺」から望む岡崎城の景観が、市民の善意と岡崎市の働き掛けにより370年の時を超えて今なお守られている「ビスタライン」の取り組みについて取り上げた。今週は市民の手で受け継がれてきた岡崎市を代表する催し「家康行列」を紹介したい。

家康行列は江戸時代、徳川四天王の一人とされる本多忠勝(1548―1610)を祭る龍城神社の祭典が起源とされる。岡崎藩士らが隊列を組み、戦法を鍛錬する儀式が行われていたという。明治に入ってからも旧岡崎藩士らによる武者行列として受け継がれていたが、昭和23年、神社に納めていた甲冑(かっちゅう)等の武具が火災により焼失。

その後、しばらくは中止されていたが、山岡荘八の著書『徳川家康』の出版により家康ブームが起きたことをきっかけに再興が検討され、地元の商店街連盟や商工会議所が「家康まつり」として復活。昭和34年の岡崎城復元とともに、市と観光協会の主催で開催されるようになった。家康公の命日である4月17日に近い日曜に開催され、ことしは4月9日の予定。

家康行列はまず、松平家・徳川家の祈願所として知られる伊賀八幡宮(本連載303号で紹介)を出発。家康公や本多忠勝、三河武士団に扮(ふん)した行列が騎馬と共に市街地を練り歩き、名鉄東岡崎駅通過後は市の中心部を流れる乙川の河川敷に向かい、火縄銃の実演など迫力ある「戦国模擬合戦」でクライマックスを迎える。ことしは俳優で武道家の藤岡弘、さんが家康公を演じるという。

これらは、祭典の起源である岡崎藩士らによる戦法の鍛錬という儀式を現代に継承する歴史あるもの。家康生誕の地に住まうという岡崎市民の誇りと後世に受け継ごうとする心意気を強く感じる。

家康行列(写真提供:岡崎市)

家康行列(写真提供:岡崎市)

(次田尚弘/岡崎市)