独自文化を後世に 加太の信仰と行事シンポ
独自の文化を保持、発展させてきた和歌山市の加太地区の信仰と行事について考えるシンポジウムが7日、同地区の交流センターで開かれ、文化財の専門家や寺社の関係者らがパネルディスカッションを行い、加太の祭りや信仰について語り合った。
加太地域活性化協議会の加太語り部くらぶが主催。京都市の聖護院門跡執事の宮城泰岳さん、加太春日神社の井関摩美子宮司、県教育委員会文化遺産課の蘇理剛志さんがパネラー、コーディネーターを藤井保夫さんが務め、地域住民ら54人が聴いた。
井関宮司は参拝者の質問をもとに神社を参拝する理由について発言。「気」という概念が古くからある日本では、神様に気を分けてもらうために神社に行き、分けてもらった分の神様の気を回復させ、盛り上げるために祭りが行われると説明し、「神様と人が一つになって地域を盛り上げようと思う心が、祭りには込められている」と話した。
続いて蘇理さんは同神社の「えび祭り」を中心に加太の行事を紹介。陸路、海路で交通の要所であった加太は「歴史のたまりやすい土地」と独特の風土を紹介。渡御行列に登場する獅子舞がさまざまな地域の獅子舞の特徴を取り入れていることや、小正月の綱引き合いなど江戸時代の加太の年中行事を紹介した。
宮城さんは修験道と加太の歴史について話し、修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が大峰山の修行の前に加太を訪れたことから、加太が修験道発祥の地と言っても過言ではないと関わりの深さを説明した。また、明治時代の神仏分離令により祭りが減ったことで、土地の神様や伝承が消えかけており、伝える人がいなくなる前に「加太の昔」を残していく必要があると訴えた。
シンポジウムを聴いた丸毛光明さん(71)は「それぞれの立場から説明を聴き、考えを再認識できた。古いいわれの多い町として、加太の新たなPRのきっかけができれば」と話していた。