成果の一方で不満も 地域猫対策の県条例

 地域猫対策の推進を軸に改正された県条例「県動物の愛護及び管理に関する条例」が4月1日に施行された。昨年度から要項に基づいて対策は始まっており、一年が経過。不妊去勢手術により、将来的に不幸な猫を生まない成果が出ている一方で、猫の自由な生活により悩まされている地域住民の声も少なくない。制度を有効に運用するためにも、地域猫ボランティアの活動の在り方や、動物愛護に対する住民の理解が重要になる。

 猫は1年に2~3回妊娠し、1回に4~8匹を出産する。雌雄2匹の猫から4匹(雌雄各2匹)ずつが産まれ、半年後には子猫が繁殖できるようになると仮定して計算すると、1年後には38匹にまで増えてしまう。

 地域猫制度は、繁殖をさせないことにより、将来的な猫の数を抑制し、殺処分などを減少させる狙いがある。申請して認定されれば、不妊去勢手術の費用が県から助成される。

 地域猫の申請件数が最も多い和歌山市には昨年度、21件の申請があった。1件当たりの地域猫数は1~35匹程度で、県全体では同市を含む15市町村で72件だった。申請が進む一方で、同市には昨年度、糞尿や鳴き声などの苦情が例年と同程度の94件寄せられており、今のところ猫についての地域の苦情解決にはつながっていない。

怒りのやり場なく住民の苦悩と不安

 「動物の愛護及び管理に関する法律」により、処分を目的にした行政などによる動物の捕獲は禁止されており、住民が自衛策を講じるしか実効的な対策がないのが現状だ。

 同市内の紀の川沿いの地区で、地域猫の餌やり場が近くにあり、家庭に赤ちゃんがいる住民は、猫の糞尿などによる不衛生な状況や、車のボンネットなどに猫が乗る足跡被害、鳴き声などに悩まされ、「精神的な苦痛は図りしれない」と不満を募らせる。地域猫の餌やりや管理は地区外のボランティアが行っており、残った餌を他の野良猫が食べることや、猫が安心して暮らせる環境にあることから、捨て猫の増加なども懸念する。

 県の地域猫対策制度では、トイレの設置管理を求めているが、猫が毎回トイレを使う保証はない。この住民は「地域猫の制度や動物愛護の精神は理解できるが、自分が被害者となると別の問題」とやり場のない怒りをもらす。

 県が発行している地域猫対策のパンフレットには、餌やりをする場所の周辺住民への説明の必要が示されており、ボランティアと住民のコミュニケーションを深めることが必要になりそうだ。

左耳に手術が行われた証しのVカットが見える地域猫(住民提供)

左耳に手術が行われた証しのVカットが見える地域猫(住民提供)