家康紀行(29)三ヶ日特産の「青島みかん」

前号では、浜松市でミカン栽培が盛んな三ヶ日地区と和歌山有田地区の交流と絆を取り上げた。今週は三ヶ日みかんの品種と特徴について紹介したい。
三ヶ日で主に栽培されているミカンは「青島」という品種。大玉でありながら高い糖度が自慢で貯蔵性に優れる。
一般的なミカンは外側の皮の色づき(着色)と果実の中身(内容)の成熟が同時に進行するが、青島は内容先熟型という皮の着色よりも内容の成熟が早いため、一般的に食べ頃とされる着色の8割程度の青みが残る状態で収穫される。
収穫後、皮の着色が進むまで貯蔵した後に出荷される。その間果物の皮(果皮)の呼吸を抑え貯蔵性を高めるため、1~2週間程度ミカンに強制的に風を当て、果皮や果汁に含まれる水分の約5%を減らす「貯蔵予措(ちょぞうよさ)」という技法が用いられている。
さらに、貯蔵予措が完了した後、ロジ箱と呼ばれる木箱に詰め土壁の貯蔵庫で一定期間眠らせることで、果実の酸が分解され糖度が増すという。
筆者が取材に訪れたのは5月。ミカンのシーズンではなかったが、期間限定醸造の果汁100%のジュースを手に入れることができた。濃縮還元(果実に熱や圧力を加え濃縮保存した後、水で果汁に戻したもの)ではく、成熟期に搾ったストレート果汁で、内容量280㍉㍑の缶に約5個分のミカンが入っているという。
実際に飲んでみると、一口目にジャバラ(和歌山県北山村特産)に近い独特の渋みを感じる。コクのある甘みにほのかな酸味があり非常に濃厚。青島みかんそのものの風味が詰められた逸品だ。ジュースは静岡県内の店舗の他、ネット通販でも購入できる。

(次田尚弘/浜松市)