いな踊り県文化財指定50周年 記念芸能祭
和歌山県海南市下津町の塩津地区で長年踊り継がれている「塩津のいな踊り」が県無形民俗文化財に指定されてからことしで50年となるのを祝う「おかげさまで50周年 記念芸能祭」が12日、旧塩津小学校体育館で開かれ、いな踊りを中心に市内各地の民俗踊りが披露され、集まった地元住民約150人から大きな拍手が送られた。
「塩津のいな踊り」は江戸時代初期の寛永19年(1642)に地域の住民らが大きな網を作り、毎年冬に回遊してくるイナ(ボラの子)を漁獲したのが起こり。塩津いな踊り保存会によると、当時の村人たちは大漁になると夜を徹して踊り、不漁時は大漁を祈願して踊ったという。踊りはイナが網の中で跳ねる姿をイメージしており、勇壮さが特徴。毎年夏に行われる地域の盆踊りで披露されている。
記念芸能祭は同保存会と塩津区が主催。市内に伝わる「亀川念仏踊り」「つつてん踊り」「大窪笠踊り」の各保存会も駆け付け、個性的な地元の踊りを披露した。
いな踊りには地区の小学生と大人約20人が出演。海に面し山が迫る塩津の地形や特産物のミカンを紹介する歌に乗り、扇を両手に持って踊る「扇踊り」や男女一組が向かい合って踊る「姿見踊り」などを演じると、客席から手拍子が起こった。
同保存会の南方嘉門会長は踊りの継承を巡る状況について「地元の小学生を対象に、大きな行事の約2カ月前から週に1~2回のペースで練習をしている」と説明し、「青年団に所属していた頃から踊っており、50周年はとても感慨深い。地域にいな踊りを残せるように頑張っていく」と意気込みを語った。
訪れた同市の上野隆志さん(61)は「漁場の様子を表現しているのが印象的で、とても勇ましく感じました」と話していた。