宝塚のモーツァルト 和市出身の寺田さん
朗読劇を披露したメンバー、RICOさん、出雲綾さんは宝塚歌劇団出身。同劇団で「宝塚のモーツァルト」と呼ばれ、今も多くの卒業生に慕われる作曲家の故・寺田瀧雄さんが和歌山県和歌山市出身であることは、地元ではあまりよく知られていない。
寺田さんは昭和31年に同劇団専属の作曲家として入職。「ベルサイユのばら」の主題歌「愛あればこそ」や「風と共に去りぬ」の楽曲など、約3000曲もの名曲を生み出し、平成12年に69歳で亡くなった。
2人は寺田さんに指導を仰ぎ、今でも寺田さんをしのぶコンサートに出演。名曲の数々を心を込めて届けている。
出雲さんは「天才的で偉大な存在。先生の曲は歌い継がれ、多くのファンに愛されています。今回の朗読劇も、ご親戚の方が見に来てくださると聞き、先生が来られるのと同じような気持ちです」。RICOさんは「寺田先生にとてもかわいがってもらいました。私自身、歌い方を教わり、歌が好きになったきっかけも先生でした。どの音楽も宝塚の豪華な雰囲気にぴったりで、今でも先生が作った曲は大好き」とにっこり。
地元にも若い頃の寺田さんを知る人物がいる。旧制粉河中学校で、寺田さんより一つ上級だった紀の川市の二越和勇さん(87)は「音楽ができるような雰囲気でなかった時代、『この道で』というしっかりとした志を持っていました。中学時代から、講堂で毎日ピアノを弾いていたのが思い出されます」と懐かしむ。
「後年親交はありませんでしたが、新聞などで活躍を知り、うれしく思っていました。新源氏物語だったでしょうか、30年ほど前に宝塚大劇場で彼が作曲した音楽を聴いた時は、テンポの速い現代風の曲に驚きました。偉大な人物が和歌山市出身であることを、地元の人にももっと知ってもらいたいですね」と話している。