米国で理美容はさみの技PR 菊井シザーズ
理美容専門はさみの製造・販売を手掛ける㈲菊井鋏製作所(和歌山県和歌山市小雑賀、菊井健一社長)は、11月にアメリカ・ラスベガスで開かれた、はさみやバリカンなどを研ぐ技術者向けの展示会に参加し、自社製品をはじめ日本の理美容はさみの卓越した技術について講演とデモンストレーションを行った。同社は、日本の技術に対する米国市場の理解が深まり、今後の販路開拓の足掛かりになると手応えを感じている。
同社が参加した展示会は「インターナショナル・ビューティー・シャープニング・アソシエーション(IBSA)」。はさみや砥石などを扱い、研ぎ師ら約60人が参加した。
参加のきっかけは同社が昨年、中小企業基盤整備機構の「海外ビジネス戦略推進支援事業」に採択され、11月に市場調査のために渡米したこと。その際、今回の展示会を主催する商社とつながりができ、招かれた。
展示会では菊井社長(29)が基調講演と技術紹介のプレゼンテーションを担当した。講演では、創業者である祖父から菊井社長の娘まで4代にわたる同社の歴史や、世界で初めてコバルト基合金を使用した、さびることがない理美容はさみを開発したことなどを紹介。プロフェッショナルの仕事を支える優れた製品へのこだわりは、聴衆の関心を集めた。
また、30年以上勤務するベテラン職人の辻内利勝さん(55)が、刃を鋭利に研ぐ技術をデモンストレーションで披露。辻内さんは日本の職場で使用しているハンマーや木の台を持ち込んで作業し、予定回数を超えて行うほどの人気となった。
今回の渡米の成果について菊井代表は、アメリカ文化に受け入れられやすい発表方法を工夫したことが功を奏したと考えている。切れ味のポイントとなる刃の裏側を「インナーサイド」と表現し、切れ味の良さを実現する繊細な部分であることを繰り返し強調し、理解が得られるよう努めた。聴衆からは多くの質問が出され、「会話を続けるようにプレゼンテーションをすることができた」。
菊井代表は「今のアメリカでは、刃がさびたら新しいはさみを買うような使い捨てが主流だが、良いものを長く大切に使う日本の職人の心や高い技術力を、今後も伝えていきたい」と話している。