幼児教育、タダより全入! 不公平にならないように

政府は幼児教育の無料化を進めるようです。消費税の増税分で3~5歳の全ての子どもの幼稚園と保育園をタダにするとの政策は、一見ありがたい政策のように思います。しかし、待機児童がなくならないのに無料化すれば、保育園に入れない人と、入れた人の不公平感は今よりも大きくなります。小中学校は全員が入れますから、無料でも問題だという人はおりません。保育でも同じように「全入化」を実現すれば、子どもを産んだママ・パパも安心して職場復帰できるようになります。
何より困っているのは0~2歳の子どもです。待機児童の8割以上は0~2歳です。無料化は、待機児童がゼロになってから考えるべきことです。保育料はもともと所得に応じて設定されていますから、無料になれば、お金持ちがより得をすることになります。無料化で入園希望が増え、問題が悪化する可能性すらあります。
一方で、認可保育所では十分提供できない、病児保育や夜間保育、障害児保育に光を当てて、予算を充実することが急がれます。
政府は、「新しく保育の受け皿を32万人分増やす」と言うのですが、それでは計算が合いません。野村総研は、2020年までに女性就業率77%の政府目標を達成するために必要な保育の受け皿は約89万人分と推計しています。この差を埋めるためには、約5千億円の財源が必要です。3~5歳の幼児教育の無料化にかかる費用は8千億円ですから、まずは、このお金を保育園全入に使うべきです。
しかし、そこで働く保育士さんは確保できるのでしょうか。他の職種と比べて約9万円も低い月給で働き手が集まらなくて、今でさえ困っています。「人」がいないのに「施設」だけつくっても困ります。無料化よりも保育士さんのお給料を上げるのに税金を使うのが筋です。
民主党政権が子ども手当や高校の授業料無料化を実施したとき、自民党はバラマキだと批判しました。あの批判はどうしたのでしょうか。5年もたって、自分たちもようやく、チルドレンファーストの考え方が理解できたとおっしゃるなら、それでもけっこうです。しかし、無料化より、まずは待機児童が全員保育園に入れるように予算を使うべきではないでしょうか。